REDWING COLUMN NO.105 ブーツのテング
ブーツの「テング」とは、屈曲して負荷が掛かる足首辺りを覆っているパーツのこと。
紐の無いプルオンタイプのブーツに使われる仕様で、エンジニアやペコスなどに見られる。
予め言うと、テングは一般的に使われている訳ではなくて、検索してもレッドウィング関連ばかりで
レッドウィングマニアや、某ブーツショップの方が独自に作った表現なのかもしれない。
おそらくテングの鼻の様な見た目をしていることから付けられた名称と思われる。
この部分のことをメーカーによっては、タンやハナという名称で呼んだりもするらしく
舌の「tongue」を無理矢理読んでテングになった、なんてオチってことはないだろうけど
やはりこうやって並べるとタン、またはベロのパーツを元にした作りと言えそうだ。
ちなみに今回は意外と夏向きということで、ラフアウトレザーをメインにしてみた。
左がペコス1188、右がエンジニア8268となっていて、エンジニアの方がかなり大きくて
とても分かりづらいけど、エンジニアのテングの頂点部分には切れ込みが入っている。
その切れ込みの具合は、二つ下の画像を見てみると分かりやすいと思う。
左が91年製PT83で右が95年製のPT91、多少違うけど履き込み具合や個体差の範囲程度。
2000年代以降に仕様変更があって、テングが細くなったり短くなったりしたそうだけど
近年の仕様はもっと角があるというか、丸みが少ない形をしている様に感じる。
テングの切れ込みの様子が一番分かりやすかった2268を選んで撮影してみた。
どうやらこれは近年のモデルには見られないらしく、今回の発見その①になった。
ちらっと写っているクリッピング跡も、旧時代まで採用されていた製法となっている。
左が93年製1188、右が97年製8168トラクショントレッドソールのペコス。
パーツの形状自体はほぼ同じ様だけど、右の方が若干くびれていて細くなっている。
左は97年製犬刻印866,右は95年製オロラセットが真っ赤な時期の866。
少し歪だったりギリギリを攻めたりと、テングの縫い方にもとても個性がある。
あまり気にしていなかったけど、ここもアメリカらしさを感じる部分だと思わされた。
こんな所を見せるブログってそうないと思うけど、テングを裏側から確認してみた。
自分の所有しているエンジニアブーツは、起毛したレザーが露出した作りになっていて
シワを逃がしたり足当たりを良くする為、この部分を繰り抜いていると思われる。
単純にレザーの裏側が見えているのではなくて、別レザーをかませてあるのも分かる。
ペコスブーツの定番モデルも、基本的にはテング裏にはレザーが使われている様だけど
エンジニアの起毛系レザーとは違って、弾力のあるヌメ革が使われている。
中央側が薄くなる様に、やや乱雑にナイフか何かで削いだ加工の跡も見られる。
トラクショントレッドソールの定番系ペコスと違って、こちらの1188はワーク仕様の為か
テング裏にはポリエステル混の様な、しっかりとしたツイル生地が使われている。
糸のほつれ防止と針穴から水の侵入を防ぐ為の、このラテックスの跡がかなり豪快。
プルオンタイプのライニングは、つま先から土踏まずを覆う側と踵側で分かれていて
定番系ペコスは左のヌメ革、ワーク系ペコスは右のファブリック系ライニングという仕様。
この部分のライニング素材が、どうやらテング裏にも使われるということらしい。
これは当記事を書くことで今更ながら発見したことのその②になった。
自分のコレクションの中でも、かなり地味な存在の廃番ペコス1188を主に取り上げてみた。
1188はペコスが誕生した初期からラインナップされていた、伝統的なモデルではあるけど
ただでさえ汚れやすくて、近年では敬遠されがちなサンドベージュのラフアウトレザーに
需要の少ない丈の長いペコス、更に旧時代のワーカー向けなニトリルコルクソール仕様。
これを履いたのはいつ以来なのかと気付き、おまけ画像として履いてみることにした。
この薄い色のジーンズにローヒールペコスのクラシカルな組み合わせがたまらない。
ペコスとエンジニアを履くモチベは、誰か他の方が履いた画像を見ることが大きいけど
こうやって客観的な感じで捉えてみると、やっぱりカッコイイなと改めて思わされてしまう。
丈の長いタイプのブーツを履くのは随分先になるけど、またシーズンが楽しみになった。