REDWING COLUMN NO.69 レッドウィング8268 低ベルト
「低ベルト」とは、その名の通りで足をホールドするベルト位置が低いこと。
エンジニアブーツのフィット感の調節の為に付けられるベルトは
基本的に上部履き口と足首辺りの二ヵ所に付けられているが
8268の旧仕様では下部のベルトが足の甲付近を抑えるように付けられている。
これを通称「低ベルト」と呼び、僅かなモデルに限って見られた仕様で
初採用の8268がリリースされた1989年製から2003年頃まで続き
古くからのレッドウィングファンや、ブーツマニアの間ではとても人気がある。
低ベルトは2018年に復刻した9269で再現されたが、現在は既に廃番となっている。
元々8268は都内のショップ別注によって企画された特別なモデルで
エンジニアブーツにアメカジと相性の良いラフアウトレザーを採用し
ベルトをパンツの裾から見えるように、絶妙な位置に取り付けられている。
1991年からはレッドウィングの日本モデルとして正規品番として加わった。
8268の低ベルトは数々の有名人に愛用されて来たが
特に代表的なのは、元BLANKEY JET CITYの浅井健一氏や
フジテレビ系ドラマ「HERO」2014年版の作中でキムタク着用などが挙げられる。
それらの有名人のファンの間でもコレクターズアイテムとなっている。
通常ベルト位置との比較。
左の黒いレザーの2268が8268のベースとなっているモデルだが
同じ様な時期に作られても通常位置のモデルとはかなりの違いがある。
履き口の形状も地味に違うのが面白い。
タグは両方とも同じPT91のプリントタグ。
PT91プリントタグは1992年途中から96年半ば頃までに作られた物に付くタグ。
PTとは「Protective Toe」の略で、つま先の安全基準の規格のことで
PT91であれば、大体翌年の1992年頃から採用されることになる。
この規格は8年ごとに改められ、PT91の前後はPT83とPT99で
低ベルト仕様はPT99規格の2003年頃までで、2005年頃まではシャフトが細い。
ベルト一本分ぐらい高さの違いがあるが
この角度だと2268の鼻筋の様なクリッピング跡が良く見える。
8268も一応クリッピング加工はされているはずだが、残念ながら見えない。
サイドから撮った画像。
既にヒールの交換時期にはなっている。
向き合わせるとバックルの高さに約一個分近く差があるのが分かる。
今度は実際に着用した画像を並べてみた。
ジーンズはクセの無いレギュラーストレートで合わせている。
そして今回一番ポイントを抑えた画像がコレ。
左の2268はベルトがジーンズの裾に隠れてしまうが
右の8268は見事に引っ掛かり良い具合に見えている。
このちらっと見える感じがたまらない。
無理にジーンズを上げたり、ベルトに引っ掛けたりしなくても
自然と見えるようになっているのが、今でもすごいなと感心してしまう。
もう一つ低ベルトのモデルがあるのでそれとの比較。
品番は同じ8268だが、左側が一つ古い仕様の8268PT83。
PT83のラフアウトレザーは平均的なベージュ色をしていて
PT91期の90年代半ば~後半頃はやや色味が濃いのが特徴でもある。
PT83みたいに更にディープな年代の物には手を出すつもりは無かったんだけど
たまたま状態の良い物が手頃な値段で売っていたので購入してしまった。
あまり着用されていなかったが丸洗いでリフレッシュ済み。
PT83のプリントタグは1990年頃から92年の途中までと比較的短い期間のタグ。
それ以前は「ANSI~」が本体に記載され、通常モデルと一緒の羽タグが付き
8268の最初期に生産された物は、その仕様となっている。
その当時はまだレッドウィングをリアルに体験する前だったので
少し身が引き締まるというか、未だに恐縮するような感じがある。
ベルト位置は左のPT83の方が若干高く、PT91の方が低い。
大体半個分ぐらいの差があるが、これは個体差とも言われている。
履き口の形状は古くなると斜めの感じが強くなるようだ。
サイドからの比較ではあまり違いが分からないが
ベルトの位置というよりも、バックルの位置に違いを感じる。
色々と画像検索で他の物とも見比べてみると
どうやらバックル位置の仕様が時期によって違うようだ。
テングの縦の縫い目との位置関係で違いが良く分かる。
バックルのピンを通すホールが変わっても、バックルの位置は大きく変わらず
むしろPT83の方は一番狭くしないとベルトが全く効かない。
ベルトは外して見ると、PT83よりPT91の方がバックル側のベルトが数㎝短く
足の側面側に来るので、PT91の方がより低ベルト感が出ている。
個体差もあるようだが、おそらく途中から変わって行ったと思われる。
PT83の着用画像。
こちらも良い感じに引っ掛かり、ちらっとベルトが見えている。
さらにPT91との比較、左がPT83で右がPT91。
やはりPT91の方がバックル半個分ぐらい低いので良く見えている。
低ベルトを存分に味わうならPT91になるのかもしれないが
バックルとテングの位置関係が大きなポイントになると実感した。
現在8268のPT83は入手が難しく、とても高額で取引されていて
PT91の方も状態が良い物はかなり少なくなっている様子。
低ベルトを再現した9269がリリースされる2018年以前は
8268の現行モデルのベルト位置を低くカスタムすることも結構あったらしい。
今の内ならまだ復刻版の9269の新品も見付かると思うが
マニア向け仕様なので、今後下手したら復刻はされないかもしれない。
いずれにせよ、気になる方はお早めに。