REDWING COLUMN NO.84 ヴィンテージレッドウィング
画像のタグはPT83(ピーティーハチサン)と呼ばれる旧仕様の物。
PTとは「Protective Toe」の略で、この表記があるとブーツ内のつま先部分には
保護の為にスチールが入っていて当時の安全靴としての基準を満たした証となる。
そしてPT83は1983年に定められた規格となり、この規格は8年ごとに改められていた。
ヴィンテージと言っても、どの年代からにするかの判断は人によるところがあるけど
レッドウィングの本場アメリカの関税法では、製造してから30年以上経過すると
ヴィンテージとされ、さらに100年を越えるとアンティークと定義されるとのこと。
このPT83タグは後継のPT91タグに切り替わるまでの1992年途中まで使われていて
つまりPT83タグが付いた物は、今年で全て30年以上のヴィンテージの仲間入りとなる。
現在8268は二足所有していて、これは中古で入手したPT83タグの1991年製の物。
中古と言っても元々使用感があまりなかったけど、丸洗いでリフレッシュさせて
決して30年以上前の物とは思えないような綺麗な状態をキープしている。
8268を愛用している代表的な方には元BJCの浅井健一氏、元TMGEチバユウスケ氏
ドラゴンアッシュの降谷建志氏やキムタクなどのアーティストが挙げられ
そのアーティストのファンにとって8268は特別なアイテムとなっている。
ヴィンテージを語るという上では製造年をしっかりと特定しておきたい。
ブーツ内部に「N1」という刻印が見られ、1991年8月製という意味を表している。
ちなみに8268は1981年にはまだ無く2001年製はタグが違う物に変更になり
アルファベット=月などの詳しい見方は特定方法の記事に書いている。
1991年となると、自分よりも少し上の世代の方の渋カジという流行時の物で
自分の所有しているレッドウィングのブーツはその後のブームで影響を受けた
90年代半ば以降が多くなっていて、それ以前の物は憧れのような想いがある。
今回の8268PT83は中央の物で、それぞれ両隣は後継のPT91規格のエンジニアブーツ。
これらに共通しているのは、現行モデルよりもシャフト(筒の部分)が細い作りだけど
左の黒2268のベルト位置が通常に対し、8268はパンツの裾からちらっと見えるように
通常よりも低い位置に計算されて付けられていた、通称低ベルトと呼ばれる仕様。
ベルト位置は個体差とも言われているけど、右のPT91の方がより低く付けられていて
おそらく初期よりもさらに見えやすくなるように位置を変更したと思われる。
この仕様は2000年代前半頃まで続き、近年は低ベルトの復刻モデルも販売された。
上がPT91で下がPT83のネオプレーンコードソールの画像。
一見ゴミだらけのように見える白い物は、ソールに混ぜられた紐状のナイロン製の物。
耐油性や滑り止めとして混ぜられていたが、新しくなるに連れて少なくなって行き
現行のソールはこの紐状の物がほとんど見られなくなっている。
こちらも同じく1991年製101ポストマンシューズ、ガラスレザーの光沢感が眩しい。
名前にポストマンとある通りに、かつては郵便に関わる方に使われた靴になる。
レッドウィング=アイリッシュセッターという認識の強かった世代なので
昔はこういうタイプは好きじゃなかったけど、今はやたらと渋く感じてしまう。
現行モデルは近年光沢感のないマットな質感のレザーに変更されたけど
自分みたいにアメカジメインだとそちらの方が合っているような気もする。
※自分の101は紐を他社製の物に交換している。
「SR/USA」は「slip-resistant, made in the USA with a tag designated」の略で
USPSのアメリカ合衆国郵便公社の規定を満たした証となるタグ。
アウトソールには歩きやすく滑りにくい材質や、アメリカの住宅事情を考慮して
庭の芝生を傷めないような形状にするなどの基準があるらしい。
「R1」下に91とあるように1991年製で、Rは10月の意味を表している。
一つ上の画像のSR/USAタグに加えて「USPS UOC」という表記が入ることで
アメリカの郵便職員のユニフォームとして正式に認められた物となるようだ。
この二つがないと正真正銘のポストマンとは呼べないと書いてあるサイトもあった。
レザーインソールには見づらいけど「SWEAT RESISTANT INSOLES」の文字や
足の幅を表す「D」にサイズの7と1/2を表すアンダーバー入り。
インソールにこれらの表記が入るのは90年代前半までとなっていて
こういうディテールは自分の多く所有しているブーツには見られない物なので
良い意味での違和感というか、古い仕様の面白みを感じる部分でもある。
こうやって30年以上前のヴィンテージ物が自分の手元に巡り渡っているのを見て
元々古着を抵抗なく受け入れていたけど、サステナブルという言葉が日常的になった
現在では物を大切にすることやその時間の意味を改めて感じている。
新しく買い足す物はもちろんそれなりにあるけど、短いサイクルで消費するよりも
一生モノみたいな物選びを重視していて、古い物をメンテナンスして綺麗に保つことや
当たり前に使うことで、現在の社会理念と通じている気になったりする。
またいつか見直した時にこの価値観のままでいるのかは楽しみなところ。