REDWING COLUMN NO.80 レッドウィング8133 スーパーソールメンテナンス編
今回は8133スーパーソールのメンテナンスを行いリフレッシュさせた。
スーパーソールはレッドウィングのブーツの中でも軽量化と低コスト化を目指して
作られたモデルで、歩行性の良さからも特にアパレル関係の方からの評価が高い。
また8133はキムタクが公私ともに着用していることはとても有名で
2014年版のドラマ「HERO」の作中や、ダウンタウンの浜ちゃんと共演した
1995年に放送された「人生は上々だ」でも着用していたのを最近になって知った。
このレザーはブラッククロームと呼ばれる物で、表面の塗膜が分厚く丈夫で
内部の油分をしっかりと閉じ込められて耐水性もあるのが特徴。
その為ミンクオイルなどは弾かれやすいので、こまめなメンテナンスの必要はない。
ブラッククロームレザーは年代や個体によって表情が大きく異なっていて
メンテナンス方法もそのレザーの質感や好みによって分かれる。
自分の所有している8133は所謂「茶芯(ちゃしん)」ではあるけど2000年代の個体で
芯の茶色が薄めの為、傷跡から見える色がはっきりしていない。
茶芯は簡単に言うと、茶色用のレザーの表面を黒くコーティングする古い作り方の物。
黒いレザーの場合は傷が目立たないような黒や灰色の物を使うのが主流だが
茶色用と黒用のベースを兼用することでコストカットをしていたとも言われている。
この画像を見ると分かりやすいと思うがベースが茶色のレザーの場合は
履き込むと芯の茶色が出るというもので、マニアはこれに価値を見出して行った。
なので茶芯レザー=傷や退色をそのまま履き込むのを良しとする考え方があるが
今回の8133はここまで茶色くならない為、汚れや傷の経年変化を楽しむのとは
別方向のメンテナンス技術の向上に当てるようにした次第。
今回のメンテナンスに用意したのはこれらのアイテムたち。
レッドウィング純正馬毛ブラシと仕上げ用に固めの毛質の化繊ブラシ。
Mモゥブレイのステインリムーバー、デリケートクリーム、クリームエッセンシャル
仕上げ用のグローブクロスにサフィールのレノベイティングカラー補修クリーム。
無印のシューキーパーと他にも汚れ落としやクリームを塗り込む布も準備した。
先ずは紐を外してシューキーパーを入れ、隅々まで馬毛ブラシを使ってブラッシング。
長年の汚れが溜まっているなと感じた場合は、温めのお湯で濡らした雑巾で
水拭きをするけど、今回はそこまでする必要は感じなかったので省略し
紐も同様に軽くはたいてブラッシングする程度で済ませた。
ちなみに外で履いた後はブーツ内外の衛生面を考えて数日玄関で待機させ
アウトーソールを水拭きしてから室内に持ち込んでいる。
ハトメ周りの緑青は表側にはほとんど見られず、裏側もこんな感じだったので
無理に取り除かなくても良いかなっていうところ。
ステインリムーバーを使って表面の汚れ落としと古いクリームの除去。
先程も書いたように、大した汚れは見られなかったのでサッと拭き取る程度で
あまり履かなくてもたまに古いクリームの油分を取ってリフレッシュさせたい。
インソールも同様にステインリムーバーで軽く拭いて汗や皮脂汚れを取り除く。
スーパーソールのモデルはインソールの素材がウレタン製のポロンが使われ
通常のレザーインソールみたいに汗をあまり吸収してくれないので
普段からたまにウェットティッシュみたいな物で拭いておくと良い。
ステインリムーバーの水気が落ち着いてブラシで表面を整えたら
デリケートクリームを指に取って薄く伸ばしながら塗り込んで行き
化繊ブラシでさらに奥に押し込むようにブラッシングをする。
少しカリっとしていたレザーがモチっとした質感に変わる。
履き口には本体よりも薄いレザーを使ったクッションパーツが付けられていて
ここは早めに劣化が来る箇所なのでデリケートクリームはしっかりと塗った。
コバ部分やベロなども同様に塗った後にブラッシング掛けをする。
傷跡の補修にはサフィールのレノベイティングカラー補修クリームを使う。
補色ではなく補修とあるように、このクリームは顔料系の素材で出来ている為
固まるとマニュキュアやペンキのようになってコーティングをするという物。
乳化性クリームの着色とは違い、傷のパテ埋めみたいな用途というところで
表面の塗膜が分厚いガラスレザーやブラッククロームの傷補修には相性が良い。
クリームを塗り10分ほど放置し、布で乾拭きをして補修が甘ければ重ね塗りをする。
※レノベイティングカラー補修クリームの他の使用例はこちら↓
仕上げはクリームエッセンシャルを布にとってムラにならないように塗り込み
化繊ブラシでレザーの凹凸にクリームをしっかりならして艶を出して行く。
当ブログではこのクリームエッセンシャルは何度も紹介しているが
これ一本で汚れ落としに保革と艶出しが出来るという優れもの。
さらにグローブクロスで拭き上げて艶感を増して行く。
細かい繊維がアウトソールの縁に残るのでブラッシングで取り除く。
艶を控えめにしたければこの工程は省略しても全然問題ない。
左がステインリムーバー後のすっぴん状態で右がメンテ後の状態。
正直すごく違いが出たという訳ではないけど、黒さに深みが出ているのが分かる。
同じく少し寄って撮ってみたが、やはり光の反射の感じが違っている。
少し言い訳みたいになるけど、メンテナンス前後であまり大きな差が出ないのは
この個体に使われているレザーが凹凸感のあるざらっとした質感というのがある。
こちらはトゥの補修後をアップで撮った画像。
塗り過ぎてこんもりとするのは微妙なので一度塗りだけにしておいた。
同じく左がトゥの補修前で右が補修後の画像。
光の反射の左側のひっかき傷はほとんど分からなくなっている様子。
右側の部分の横に入った傷はもう少しやりようがあったかもしれないけど
この距離で見ることはそうないので、個人的にはこれで充分かなと思う。
最後に紐をびしっと通して、いつでも履ける状態に戻しメンテナンス終了。
レザーもしっかり潤い光沢感も増して引き締まった表情をしている。
この8133は他のモデルとは違う方針ということで若干作業工程が多くなって
繊細なところがあったけど、今回も充実感のあるメンテナンスになった。
次はどのモデルをリフレッシュさせるかあれこれと手に取りながら考え中。