REDWING COLUMN NO.92 サフィールのレノベイティングカラー補修クリーム
当ブログでは何度か登場している、サフィールのレノベイティングカラー補修クリーム。
湿度の高い時期の大掛かりなブーツメンテナンスは、カビのリスクを伴ってしまう為
細かい作業の方が適しているということで、今回このアイテムについて書いてみることにした。
これは修理店に持ち込むと高額な修理が、自宅で手軽に出来る補修用クリームで
使いやすいチューブタイプは容量25ml、現在の定価は税込み1430円となっている。
起毛素材や爬虫類系など一部を除き、合成皮革を含む革製品全般の傷補修に使え
基本となる黒や茶系以外にも赤、青、黄色などの派手な色にも対応出来る全47色展開に
微妙な色合いも他の色などと混ぜて、対象の物に合うように好みの色を作ったり
一旦塗って失敗したと思ったら、完全に乾く前に拭き取ればやり直しも可能。
乾いて定着すれば色移りもほぼしないので、革靴やカバンなどのメンテ必須アイテムを始め
車のハンドルやシート、ソファーなどの身近な家具にも使用出来るのが嬉しい。
サフィールのレノベイティングカラー補修クリーム目次
成分と注意点
左がサフィールのレノベイティングカラー補修クリーム(以下RCクリーム)で
右がモゥブレイのシュークリームジャーという乳化性クリーム。
RCクリームの主な成分はアクリル樹脂と顔料、早い話がアクリル絵の具のような物で
新しい膜を作って傷を隠すように表面をコーティングするという物。
対してモゥブレイの乳化性クリームは水、油、ロウ成分に色は染料となっていて
その成分を染み込ませて色を浸透させる物。(メーカーによっては顔料の場合もある)
RCクリームの成分を見てもらうと分かると思うけど、表面の保護にはなっても
革に必要な栄養成分は含まれていないので、一見同じ黒の補修用クリームに見えても
成分が違うと、色の乗り方に加えて栄養補給という点でも大きく違いが分かれる。
左はレッドウィング8160ガラスレザーをRCクリームで補修した前後の画像。
右はレッドウィング9011ベックマンをモゥブレイのクリームで補修した前後の画像。
左のガラスレザーみたいに光沢感の強いレザーはあまり水や油が染み込まない為
表面がよほど削れない限りは、乳化性クリームでの補色はほとんど期待出来ない。
右みたいにレザーの地の部分が露出した場合は乳化性クリームでの補色も可能で
傷の程度によっては、かなりナチュラルな雰囲気で仕上げることも出来る。
これはレザーの質感や状態次第でもあり、傷の補色や補修を覆うようにするのか
または染めて目立たなくさせるか、メンテナンスの有無も含めて完全にそれぞれの好み。
RCクリームは簡単に色が乗る反面、あまり多用してしまうといかにも手を加えた
不自然な感じが出てしまうので、左みたいな小傷などの部分仕様が良いかもしれない。
右の屈曲するようなシワの部分は、再度ひび割れてあまり期待出来ないのも注意点。
レッドウィングのブーツで実践
最近何かと出番の多い、レッドウィング8161を実際に傷補修をしてみた。
用意するのはRCクリームに、汚れ落としやオイル除去用のステインリムーバー。
クリーム塗布や乾拭き用に使い捨ての布数枚、お好みで細部用につま楊枝や綿棒。
つま楊枝は先が尖ったままだと表面を傷付けてしまうので、先を軽く潰しておく。
後はそれぞれに合わせて仕上げ用のクリームやブラシなど。
ちなみに1990年代後半から2000年代半ばまでラインナップされた茶色のガラスレザーは
カラーナンバー05のダークブラウンのRCクリームがかなり相性が良い。
先ずは基本のブラッシングをしてから、補修箇所をステインリムーバーで
表面のクリームや汚れなどを落としてリフレッシュさせておく。
今回のメンテナンスはトゥの小傷だけなので、トゥ付近だけを行った。
もしも傷がざくっと大振りだったら、紙やすりなどで平らにならしておくのも良い。
ステインリムーバーの水分が落ち着いたら、RCクリームを塗るメインの工程に移る。
クリームの塗布は指でも布でも塗りやすい好みのスタイルで問題無し。
オイルっぽい臭いがあるので、窓を開けたり換気にも一応気を付けたい。
今回は綿棒を使い直接RCクリームを取って気になる箇所に塗って行った。
これでも傷の大きさからしたら多過ぎたので、ごく少量ずつ調整しながらがおすすめ。
もしも塗り過ぎてしまったら乾く前に布などで落として、再度塗って納得行けば
乾くまで10分ほど放置し、その後乾拭きして状態をチェックしてみる。
これはRCクリーム一度塗りして乾拭きした後の状態。
だいぶ傷が目立たなくなったけど、もう少し手を加えたくなったので二度塗りへ。
そしてこちらは二度塗り後の完全に乾く前の状態。
若干塗り過ぎて不自然な部分があるので、そこを調整してから乾かして乾拭きへ。
RCクリームの補修に納得行ったので、今回もお疲れ様のレッドウィング純正クリームを
トゥ付近に塗って、純正馬毛ブラシでブラッシングをしてメンテナンス完了。
最後に無色の乳化性クリームで潤わせ、ブラッシングで仕上げた状態。
少し深めの傷とその上に二本あったような傷跡はあまり分からなくなったと思う。
一番左から①はメンテ前、②はこのレザーでは補色が難しい乳化性クリームを入れた後
③リセットしRCクリーム一度目、④RCクリーム二度目、⑤調整して仕上げた状態。
こう見ると塗り過ぎた④よりも、少しもの足りないぐらいの③でも良いかもしれないし
そして割と調整が上手く行った⑤は個人的にも納得の仕上がりになった。
その他のアイテムで実践
ブーツだけじゃなくて、ついでに手元にあったレザージャケットも補修してみた。
このジャケットの傷自体は全く気にならなかったけど、カバンとかも長く使い込むと
こんな感じに塗膜が剥がれると思うので、それを想定して補修前後を見て貰えたらというところ。
今度のレザージャケットは05ダークブラウン単体では若干明るく見えたので
01ブラックと混ぜてダークブラウンをさらに暗く調整してみた。
傷部分に綿棒でRCクリームを軽く塗って、10分放置して布で乾拭きして完了。
これだけ見たらどこを直したか分からないかもしれない。
レザーのシボ感まで再現するのは厳しそうだけど、こういう縁の部分の傷なら
色がバッチリ決まってしまえば、作業自体の難易度も低めだと思う。
ちなみに数日後に見直した時に補修箇所をすぐに見付けられなかった。
暗い色のレザーならあまり気負わずに補修が出来るので、もしも愛用しているアイテムの
傷補修を修理店に出そうか悩んでいる場合は、一度RCクリームを試してみる価値アリ。
終わりに
昔はレザーの補修をどこか邪道のように思っていたけど、色んなアイテムを使ったり
作業を体験して行く内に、こういうのも面白いと次第に受け入れられるようになった。
但し自分は、味のある経年変化やヴィンテージっぽい雰囲気を大切にするアイテムと
クリームで補修して、綺麗さや清潔さを保つアイテムとを分けるようにしていて
ブーツの表情やレザーのメンテナンスを一辺倒にはしないことを心掛けている。
今回は後者の方に最適なメンテナンスになったけど、それなりに綺麗に仕上がると
自分で出来たという達成感から、スキルがまた上がったかもと嬉しくなる。