赤い羽BLOG

REDWINGとMr.Childrenを愛する男の趣味ブログ

3.11とレッドウィング8175

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早いものであれから10年。

被災地の方、被害に遭われた方々にはお見舞い申し上げます。

 

自分の住んでいる地域では直接的な被害は少なかったけど

当日は電車が止まり、職場から帰宅する手段が徒歩になってしまった。

所謂、帰宅難民というのを体験した。

友人宅や上司宅にお世話になってやり過ごすことも可能だったけど

その日の内にどうしても帰りたい事情があったので

歩くの好きだし、まあ行けるかなと軽いノリで帰路に就くことにした。

しかし、想像以上に険しい道のりだったのは鮮明に覚えていて

当時の職場は自宅最寄駅から特急的な電車で20分ほどの距離で

後から歩いたルートを辿ってみたら25㎞あったのは驚いた。

 

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その当日履いていたのが、選りに選ってこのレッドウィングの8175だった。

というのも、デッドストックから下ろして着用数回目ぐらいで

まだ自分の足に馴染む前の状態で長距離を歩くことになってしまった。

トゥ周りの黒ずみは逆足のアウトソールと擦れて色が付いてしまう為

この日一日で一気に黒くなったなという印象がある。

しかも見ての通り黒いゴツゴツとしたソールのタイプは重い部類で

荒れた凸凹の地面や自然の中でこそ歩行性が上がるが

平らなアスファルトの上を長距離歩くのはあまり向いていない。

普段から長距離に慣れている方でも、このブーツは相当厳しいんじゃないかと思う。

その時に着ていたアウターも冬用としては若干物足りない物で

何でこんな日に限って軽装&履き慣れない重たいブーツなんだろうと

当日の朝の自分のチョイスを恨んだりもした。

 

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あの日もこんな感じのどんよりとした空だったのは良く覚えている。

夕方前はそこまで寒くはなかったけど、雨がぱらついた時はヤバいかもと少し焦った。

とにかくひたすら歩き続けることになるが携帯の電波もほとんど入らず

たまに運良くメールを送受信出来れば良いぐらいの感じで

どういうことが起きているか情報が全く入らないままだった。

しばらくして同じ方面へ歩いていた、自分よりも歳の若い兄ちゃんと意気投合し

他愛もない話をしながら歩いたが、空も暗くなり停電しているエリアに突入すると

街灯や信号機も消え、民家の明かりのない街中の怖さを味わった。

足元すら危うい暗闇の中で、急に「ワーッ!」という声がした矢先

兄ちゃんが道路の側溝に落ちるハプニングもあった。

怪我がなくて良かったが、車通りのない住宅地はとても緊張感があった。

 

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そして職場を出てから3時間ほど経過し、もう夜の7時ぐらいになっていた頃。

自宅まで半分ぐらいの地点の駅に辿り着き、少しだけ休憩を取ることになった。

でもその駅は兄ちゃんの目的地のすぐ手前で、兄ちゃんと別れることになってからが

本当の意味で苦痛を感じる長い道のりが始まった。

思い返せば、大した会話はなかったけど話し相手がいたのはとても大きかった。

その兄ちゃんは別れ際に乾電池式の携帯電話の充電器を手渡してくれて

最後には握手をして「頑張ってください」と声を掛けてくれた。

連絡先とかは交換しなかったけど、今でも元気でいるのかなと思ったりする。

 

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でも中途半端に休んでしまったのと、言わば仲間がいなくなったことで

足取りが急に重たくなって体もだるさが来てしまい、疲れを感じてしまっていた。

バスで帰ろうものの長蛇の列や道路の大渋滞に萎え、ここまで来たらもう歩くしかなく

エネルギー補給出来るような物が欲しかったけど、コンビニは売ってくれず

回送のタクシーに無理矢理乗り込むサラリーマンなど殺伐とした雰囲気はあった。

次第に夜の本格的な寒さがさらに体にダメージを与えて行き

最初は徒歩で反対方向へと進む方とすれ違うことも多かったが

残り半分を越えた頃から徐々に周りに人がいなくなっていた。

 

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それ以降は大きい道路沿いだったので、目の前には充分な明かりもあって

好きな音楽を聴きつつ、ただひたすらと無心に歩き進めて行った。

常備していたガムを噛みながらというのも結構良かったと思う。

いよいよ自宅まで残り1/4ぐらいの距離になると風景も見慣れたものになっていて

もうすぐゴールだなと気持ちも落ち着いて行った。

自宅近辺では停電の影響もなかったようで、その平穏さに不思議な気もした。

そして歩き始めから6時間、めでたく感動のゴール地点の自宅へ到着。

到着の安堵感と達成感で、着いた瞬間にどっと疲れが出て来た。

すごく驚いたのは、土踏まずが千切れているんじゃないかってぐらいの痛みと

体のそこら中に異変を感じ、脛の筋肉と肩が早くも筋肉痛を起こしていた。

その後、災害の詳しい状況を知ることになった。

 

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何かの節目の日でなくても、このブーツを目にした時に当日を思い出すことがある。

正直良い思い出ではないので、またこれを履いてあの距離を歩くのは厳しいなって

嫌なイメージが残ってしまってからほとんど履くことはなくなってしまった。

その後は何年か前に一度丸洗いしてから、ずっとそのままの状態だったけど

今回はあれから10年ということもあって久々に足を入れてみた。

長い間履いてなかった割には、履き心地の違和感も全然ないし

そう言えば靴擦れが全くなかったのを思い出した。

 

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被害に遭われた方と比べて自分のことは本当に些細なことだけど

あの日のこととなると、実際に体験したという意味で

このブーツで長距離を歩いたことになるかもしれない。

こんな振り返り方にはなるけど、今後も忘れることはないだろうなと思う。