Levi's VINTAGE Detail Vol.2 70505 BIGE 3rd仕様&4th仕様
リーバイスのGジャン70505の3rd(サード)仕様もしくは4th(フォース)仕様について。
70505は1966年に通称3rdの557から品番が変更されたモデルで
その変更直後の1960年代後半から70年代前半頃の物は「70505ビッグE」
もしくは前身の3rdモデルに続くことから4thとも呼ばれている。
ただしディテールを細かく見て行くと、移行期に当たる個体があり
70505でありながら、1966年に刷新する以前となる557同様の作りの
つまり3rd仕様であると判断することが可能となっている。
今回残念ながら手元に3rd仕様の70505が無いので70518と比較している。
ちなみに一番左が通称2nd(セカンド)と呼ばれるタイプの復刻版の物。
3rdや4thとは根本的にデザインが違い旧時代のワークテイストが感じられる。
ざっくり言うと1st(ファースト)は2ndの胸ポケットが片側だけになっていて
詳しいことについて知りたい方は検索するとたくさん出て来ると思う。
そして今回じっくりと見比べて行く二つのGジャン。
左が840BXX→840B→70518と引き継がれて来たモデルのGジャンで
オフホワイト色のツイル生地でカツラギGジャンとも呼ばれる物。
右は557XX→557→70505と変遷した定番的なデニム生地のGジャン。
定義的に3rdモデルと言えるのは、557(厳密には違うが840B)までとなっている。
素材の違い+左綾と右綾の生地目の使い方は別だが基本的な作り方はほぼ一緒。
左綾は向かって左上から右下方向に捻じれる特性があり
右綾は反対に右上から左下に捻じれてしまい、リーバイスは主にこちら側が多い。
両方とも本来表記されていたサイズは同じであろうと思われ
生地の違いや洗濯による縮みの誤差はあるけど、肩幅や身幅に袖丈などはほぼ同じ。
今回のテーマの3rd仕様なのか4thなのかは、比較対象があればこの通り一目瞭然で
上に置いてある着丈の短い白い生地のカツラギGジャンが古い物で
旧時代を引き継いだ60年代3rd仕様となっている。
補足として、かつては70505のロング丈版の71205というモデルもあったが
その場合は袖丈も長くなり、これはほぼ同じなので下は70505であることが分かる。
ウエストバンドと呼ばれる、ウエスト周りを囲むパーツ一つ分ぐらい丈が違う。
Gジャンは作られた当初の作業着としての真四角のシルエットのワークジャケットから
現在の様な普段着のオシャレアイテムへと生まれ変わることになり
リーバイスでは、その大きなターニングポイントが1966年となっている。
その仕様変更にはラグがあり、移行期の個体をどうやって見分けるのかについて
一般的に言われていることから、あまり知られていないことまで
自分なりに書き起こしておこうと思い至った次第だ。
そして先程書いた左綾と右綾の捻じれはこの画像がとても分かりやすい。
マニア度☆
一般的に言われている中から、先ずはパッチの大きさについて。
上の画像は復刻版の物だが、1966年の変更前はジーンズに付けられている物と
一緒の大きさの縦横の割合が3:4ぐらいの物が付いていた。
これを「大パッチ」と言い、水色で囲った横長の大きさになると「小パッチ」と言う。
小パッチは1966年頃から徐々に採用され、完全な移行は翌年辺りと思われる。
大パッチであると557、もしくは840Bの可能性が充分に考えられ
例外として557&70505、840B&70518両方の記載がある場合もある。
パッチは消失してしまうことが多く、手持ちの二つも無くなっているが
ステッチ跡の大きさで分かり、両方とも小パッチが付いていたと思われる。
左の70518は肉眼でもとても分かりずらいが横長と確認。
右の70505は下段の表側から見るとパッチの大きさに色が残っている。
今回書いているポイントとしては、パッチの大きさや表記だけを頼りにせずに
以下のディテールを見ると、3rdと4thのどちらに近いかが分かって来る。
マニア度☆☆
胸ポケットに付けられている赤い小さいタブは通称「赤タブ」と呼ばれる物。
左の「V」の文字の左右の大きさが同じ物は「均等V」という古い仕様。
右の「V」の左が太く、右が細い物は「不均等V」となっている。
赤タブの均等Vは1953年頃から60年代後半まで使われ
不均等Vは60年代半ばから1973年頃まで使われたと言われている。
つまり移行期間は60年代半ば~後半の比較的長い、数年程度はあったようだ。
そして1973年頃から「E」が「e」の小文字のタイプが主流になって行き
大文字を「ビッグE」や「キャピタルE」と言い、「70505ビッグE」のように
品番に付けて呼ぶ場合はそのディテールの最終モデルを指す。
70518は赤タブが付かないので、均等Vは501XXの物。
マニア度☆☆
ボタンも1966年頃を境に変更がある部分。
左と右は撮影の角度が少し違うが、色味はほとんど一緒の物。
違いは文字周りのツブツブの具合と中央部の膨らみ加減。
古いタイプはツブツブが少なく中央に丸みがある。
ここには無いが移行期には中央がフラットなタイプも見られる。
ほぼ同じタイミングでボタン裏もアルファベットから3桁の数字へ移行し
501などのパンツ類はアルファベットから1桁もしくは2桁になり
3桁の数字の移行はその後10年以上経ってからになる。
このアルファベットや数字は製造された工場のある都市、または地域と言われ
「O」はOから始まる地名である可能性が高い。
「524」は「6」&「E」と一緒とされ、テキサス州のエルパソ工場製になる。
マニア度☆☆
4thで着丈が長く変更されると共に、ポケットの形もやや細長くなっている。
右側はステッチの切り替えしもやや鋭くなっているのが分かる。
マニア度☆☆
ポケットの縁の部分のステッチは割と一般的な判別方法。
古い物は2本で縫われ、4th仕様は1本で縫われている。
マニア度☆☆
フロントのV字の切り替えパーツの最下部の幅。
これも昔から言われていることで、古い物は幅が狭い。
ただし、これは個体差があるので古い物でも若干広い場合もある。
マニア度☆☆☆
意外と言われることのない、袖の開口部分の長さの違い。
古い物はこの開口部がカフス1個分ぐらいであまり開かないが
4th仕様はカフス2個分ぐらいなので大きく開く。
これはとても分かりやすい部分なので、先ずここから見ると早い。
マニア度☆☆☆
袖のカフス部分の縫い方の違い。
黄色がシングルステッチで赤がチェーンステッチ。
70518は同色なので見づらいが全てシングルで縫われている。
70505は修理しているが上下の横方向はチェーンで、縦だけシングルになる。
マニア度☆☆☆☆
そして面白いのが、古い作り方はカフス部分の縫い方。
裏表をずらして合わせて縫われている。
意図的に重ならないようにしてステッチを外している。
新しい物でも多少のずれは見られるが、もっと簡素的な作り方になる。
マニア度☆☆☆
裾のウエストバンドの縫い合わせのステッチ。
古い物は端の部分はカタカナの「コ」の字、または逆の形にシングルで囲い
途中からはチェーンステッチで縫い上げている。
4th仕様は縦方向のみシングルで上下の横方向は全てチェーンステッチになる。
この横方向のチェーンステッチは擦れてとても消失しやすい。
マニア度☆☆☆☆
サイドのアジャスターの形状とステッチの違い。
多少形状のムラや個体差もあるが、3rd仕様は若干先が細い形をしていて
2ndなどの更に古いモデルもこれと同じような形をしている。
4thは割と普通な長方形で先が細い形にはなっていない。
ちなみにボタンホールも全く違い、古い方がとても頑丈な作りで
新しい方がダメージが出やすくなっている。
更にアジャスターを止めるステッチの違い。
3rd仕様は表側は1本で、4thは四角く囲って縫われている。
しかし2ndは4thと同じ縫い方で、3rdの初期も四角とややこしい。
つまり3rd仕様の縫い方は比較的短い期間限定の縫い方のようだ。
マニア度☆☆☆☆☆
おまけでもう一つ。
裏側から見える、ポケットフラップの仮止めのステッチ。
古い作り方がシングルステッチで、新しい方はギザギザに縫うカンヌキ止め。
これは自分でもかなりマニアックなポイントだと思う。
リーバイスのヴィンテージ入門編として、取っ付きやすい70505ビッグE。
おそらくボタンとパッチが早めに切り替わって行ったと思われるが
正確なことは残念ながら自分の調べられる範囲では分からない。
何十何百と見て来た、古着のプロの方であればもっと違いが見付かると思うし
デニムの色やステッチなど、もう雰囲気だけで分かってしまうらしいけど
今回挙げたポイントを見れば、古着慣れしていなくても充分に判別可能。
単純にヴィンテージと言う意味の希少価値で言えば3rd仕様だけど
実際に着るとなると着丈の長い4thの方が圧倒的に取り入れやすい。
通好みなタイプの3rd仕様と着回しの利く万能タイプの4th仕様。
どちらが好みなのか、ディテールで選ぶのも面白いかもしれない。