REDWING COLUMN NO.61 レッドウィング クリッピング跡
クリッピングもしくはクリンピングとは?
(意味からするとクリンピングが正しいと思われるが、ここではクリッピングで統一)
レッドウィングのエンジニアブーツなどに見られる古い製法で
足首から甲の部分を立体的に成型することによって出来る跡のことを言う。
クリッピングは現在の生産技術ではあまり必要がなくなったそうだが
伝統的な製法にこだわる様な靴メーカーなどでは今も取り入れている。
そのクリッピング跡は、かなりマニアックなポイントなので
一体どこのことだと思ってしまう方はこの次の画像へ。
クリッピング跡は足の甲部分の、この鼻筋のような跡のこと。
レザーの裏側から型を当てて、甲の中央が∩のようになるようにクセ付けている。
足の甲部分に紐が無く調節が効かないタイプのブーツでは
クリッピングを行うことで、甲から足首に掛けてパーツが綺麗に立ち上がり
フィット感の向上と長く履いた時の型崩れもしにくくなると言われている。
ブーツだけに使われる訳ではなく、ローファーなどの紐の無いタイプには
現在もクリッピングを入れることもあるそうだ。
こう言う伝統的な作り方があると全く知らなかった時は
何でセロテープを貼ったような跡があるのかと、すごく不思議に思っていた。
直射日光に当てたクリッピング跡はやや茶色くなっている。
これも伝統の茶芯と言うレザーで、共にマニアにはたまらないポイント。
レッドウィングのエンジニアブーツでクリッピング跡が見られるのは
PT91期、つまり2000年前後までと言われていて茶芯レザーもほぼ同じ時期まで。
クリッピング跡はレッドウィングではエンジニアブーツには見られるが
足首まで覆うような似たような形状のペコスやロメオなどには無い。
ただし90年代以前などのもっと古い物については不明。
現在販売されている復刻のエンジニアもクリッピングはしているそうだが
はっきりと分かる様な跡は入っていないようだ。
テングと呼ばれる足首の凸状のパーツからつま先側に「ノ」の字ような
カーブを描きつつ、足の甲のアーチ状の形を立体的に成型するクリッピング。
足の指の付け根付近まで入る、そのクリッピング跡は個体によって加減が違い
履き込むことで目立たなくなる場合もある。
現在手元にあるエンジニアブーツでクリッピング跡が見られるのは
左の2268と右の8271、両方ともPT91のプリントタグの物。
この年代はシャフトと呼ばれる筒状の部分が細く出来ているのも特徴。
材質の問題もあってか、こちらはかなり分かりづらい。
肉眼ではもう少し見えるが、この角度の撮影ではほとんど分からない。
テング部分は微かに跡があるかなと言う程度。
足の甲部分のバンプもしくはヴァンプと呼ばれる箇所には
光の加減で何とか確認出来るレベル。
一応ラフアウトのエンジニア8268も確認してみた。
左はPT83で右がPT91、同モデルの年代違い。
8268にもクリッピング跡は見られるようだが、両方ともそれらしい跡はない。
ラフアウト素材は年代によって色味が違うが、平均的な色合いは左の感じ。
90年代半ば~PT91が終わる2000年前後は、右のようなやや赤みのある個体が多い。
左はPT83、角度をいじってもクリッピング跡は見られない。
右はPT91、こちらの方が毛足が短いので可能性はあるかなと思うが
ラフアウトの材質的に確認がとても難しいようだ。
ちなみに8268の旧モデルはベルトが低く付けられていて
パンツの裾からちらっと見える絶妙な位置にある。
2003年頃から左の通常位置に変更されている。
クリッピング跡は、一見どうでも良いように見えるが
これがあるだけで古いタイプのブーツだとすぐに分かるようになっている。
まあ自分もそうなので否定しないけど、ヴィンテージ好きやブーツマニアは
本当にこう言う細かいディテールがとても気になってしまう。