Levi's VINTAGE Detail Vol.3 16刻印の工場判明&その他3桁刻印
永らく謎とされていたリーバイスの「16刻印」の工場が判明された。
ヴィンテージマニアの間で人気のある「16刻印」は数の少なさに加えて
本来その年代で見られる仕様と違い、明らかに古い年代の生地やパーツを使った
珍しい個体が存在していたことから、少量生産の特別な工場とも言われていた。
柴剣談話室というブログでは、リーバイスファンの方からの情報を元に判明した
16刻印の工場についてや、1960年代後半以降から2000年代頃までに主に
使われていた「3桁刻印」のリーバイスの工場リストをまとめて紹介していて
自分にとっては目から鱗だったので、ジーンズや古着好きの方は一見の価値アリ。
リーバイスの工場と刻印
何故現在も古いリーバイスの工場について熱く語られているかというと
やはりリーバイス社の業績悪化に伴った米国内の事業縮小がとても大きい。
1990年代後半から大量の従業員削減と、主要であった米国の工場閉鎖が進み
2003年に米国内の全工場が閉鎖され、生産は米国他社もしくは海外となって行く。
後にリーバイスが米国自社工場で生産されていた製品を伝統的な物として
見直されることになり、在庫が少なくなると共に年々その価値が上がっている。
以前はいつ頃作られた物なのかと、大まかに判別されていた程度だったけど
熱心なファンの研究もあって、近年の物は何年どこでと細かく特定されて行き
あまりオープンにされていなかった情報が徐々に解明される面白さがある。
※画像は現在学校として使われているリーバイスの元バレンシア工場。
リーバイスのジーンズやGジャンなどに見られるボタン裏の刻印は
それらが製造された工場や部門、またはその地域などを表していて
リーバイスファンやジーンズ好きの方はとても気になるディテール。
刻印は数字やアルファベットが使われ、年代によって使う物が分かれていて
画像左から言うと、「2刻印=2工場」「O刻印=O工場」「555刻印=555工場」となる。
この刻印は1950年代初め頃から使われ、初期は隠しリベット裏に入れられていた。
※隠しリベットとは、バックポケット裏に補強リベットを使う古い時代の仕様のこと。
16刻印
そして、今まで謎だった「16刻印」は米国ミシシッピ州ボールドウィンにある
「Lucky Star Industries, Inc.」というリーバイス社の製品を委託されていた
別の会社で作られていた物ということと判明したようだ。
さらに「16刻印」は後に「653刻印」となることも判明していて
「653」の頭の「6」はリーバイスではない別の会社という意味になる。
柴剣さんのブログでは1958年から1998年まで受託していた旨の記述もあるが
一方でジーンズリペア専門店の方や古着屋さんのブログでは
1958年頃のディテールよりも、少し古い年代の501XXが紹介されているので
1958年よりも前からリーバイス製品の生産を開始していた見込みが高く
稼働初期にあたる1950年代頃の物は他工場製の物と著しい違いはないらしい。
やはり、16刻印のイレギュラーな物は主に1960年代以降から見られるらしく
他と明らかな違いがあるのは、1970年代から80年代製の物と言われていて
材料となる生地やパーツを無駄なく使い切ろうとしていた理由が考えられる。
リーバイスでは1960年代から生産拠点となる工場が増えて大量生産が始まった頃で
品質は均一化されて行くが、Lucky Star社は下請けの別会社ということもあって
材料の生地などの在庫管理や、縫製の仕様変更の基準や共有が曖昧となり
結果的に独特な個体が流通されたという見方が出来そうだ。
デニムの色落ちの違いなんて履き込まなければほとんど分からないし
出荷前の検品の緩さも、その時代だからこそ許されたものかもしれない。
自分の16刻印の501XXはおそらく最初からV字のステッチがなかったと考えられ
これもLucky Star社仕様だったりするのかもと期待してしまったが
裏から見ると端を縫い過ぎて脱線して、上に切り返すことを諦めたのかもしれない。
こういう昔の職人さんの匙加減的な物も見られるのがヴィンテージの面白さ。
昔集めたヴィンテージ古着はほとんど手放してしまって後悔だらけで
手元に残した物の一つが、この1950年代の501XXで特に耳のアタリがお気に入り。
数百万とかのお宝級の物じゃないが、今なら数十万ぐらいの値段は付くと思う。
1960年代以前のジーンズってやたら太かったり、丈が短かい物が多いけど
このXXは古い時代の太くズトンとしたシルエットの作業着的な感じが全くなくて
ある意味普通っぽいので、履き過ぎて色落ちが進んでしまい観賞用と化している。
裾の方が若干濃いめに写っているけど、肉眼で見る感じにかなり近付けられた。
あまりこれにザ・アメカジって感じでコーディネートするイメージがなくて
レッドウィングのブーツの中でもベックマンやポストマンみたいに
光沢があって少しドレス寄りなタイプで、白いシャツとかを合わせたいような感じ。
いずれまた履くとしても、もっと歳を取って貫禄を増した頃かななんて思ったりする。
この写真は度々登場する、おそらくサッカー終わりの若かりし頃のトビウオギタオ。
このパッチワークシャツとコーディネートスタイルで当時の年齢が大体分かる。
写真で履いているジーンズは既に手放してしまったが、16刻印から引き継がれた
「653刻印」の1980年代初め頃に作られたリーバイス505。
505は裾が細くなっていて、コンバースみたいにボリュームの無い靴でも
裾を引きずらないので、この頃は特に履いていたような気がする。
一緒に履いているMADE IN USAのオールスターはどこに行ってしまったのか不明。
写真からでは全く伝わらないが、この505は80年代とは思えない縦落ちがあって
まるで70年代の66を思わせるような雰囲気で、明らかに同年代の物と違っていた。
当時は何でこんなに色落ちが良いのだろうという不思議な思いと
もしかしたら、これはパチ物なのかもという疑いの気持ちが入り混じっていた。
今となっては深く追求せずに手放してしまったので後悔する思いが強く
似たような653刻印の505は探せば見付かるけど、正直手が出せない。
522&524刻印
ここからは柴剣さんがまとめている3桁刻印リストの中から所有しているアイテム。
524刻印は6刻印やE刻印としても知られるテキサス州のエルパソ工場製の物。
自分の所有している70505はボタン裏が見にくい胸ポケットには522刻印で
それ以外は524刻印という、意図的に別の刻印のボタンが付けられていた。
かつてはエルパソに複数の工場があって、511、520、525刻印などもそれに当たり
522はロマランドという場所で、524はサイプレスアベニューの工場の番号らしい。
ちなみにエルパソの工場は1998年頃から2002年に掛けて全て閉鎖されたが
近年の「MADE IN THE USA」シリーズで再稼働されたようだ。
529刻印
とても見にくいが、この2着のコーデュロイ生地のGジャンは共に529刻印。
529刻印はニューメキシコ州のホッブズ工場製の物で比較的情報が少なめ。
529のように「5」から始まる場合はリーバイス社の米国国内工場を表す。
350&H07刻印
左のGジャンはずっと80年代の70505だと思っていたが、どうやら70506らしく
何故右の70年代の物よりも丈が短いんだろうと不思議に思っていた。
70506というとお腹部分に手を入れられるポケット付きGジャンの品番だったけど
70505が1980年代後半に廃止され、このタイプに移行したとかどうとか。
マカオ製の「350刻印」は「H07」へと変わり、この頭の「3」は米国以外を表す。
この個体も見づらい胸ポケットに古い方の350刻印のボタンを使い
それ以外は新しい方のH07刻印のボタンを意図的に分けて付けられていた。
555刻印
一番有名な555刻印はリーバイス本社所在地のカリフォルニア州サンフランシスコ
バレンシア工場は1906年のサンフランシスコ地震のすぐ後から建設が始まり
2002年まで稼働していたリーバイスの伝統的で特別な工場として人気がある。
ウエスタンシャツには刻印は入らないが、内側のラベルに555記載があった。
その他の刻印
こちらのアルファベットの「O刻印」と「2刻印」は特定がされていないタイプの物で
これ以外にもアルファベットと数字の刻印はいくつか存在する。
初期となる1950年代の刻印は数字で、1960年代の短期間にアルファベットを使い
その後はまた数字の「1桁刻印」または「2桁刻印」で、後に3桁に統一され
ジーンズとGジャンでは3桁刻印の開始の時期が10年ほどの差がある。
アルファベットはその地域の頭文字や、意味合いのある文字の可能性が高く
E刻印と6刻印が一緒の個体から見つかり、後に6と524はエルパソ工場と判明し
「EL PASO」の頭文字のEが使われているのでは、という流れになっている。
この「O刻印」はほとんどがGジャンタイプに見られた刻印と言われ
「O」に当てはまりそうな地域は、Oが含まれる529刻印のホッブズ(Hobbs)か
同じくニューメキシコ州の549刻印のロズウェル(Roswell)辺りが考えられる。
「2刻印」は比較的少ないとされているが、数字の2がどのアルファベットから
引き継がれているのかを自分では調べようがないのが現状。
おわりに
今回は二本立てにしても良いぐらいのボリュームになってしまったけど
リーバイスの刻印はヴィンテージマニアやジーンズ好きの永遠のテーマでもあって
16刻印の判明という、まだ一部だけど大きな発見になったはず。
ヴィンテージリーバイスの本当に細かい部分が解明されて行ったのは
2000年代以降になってからで、もし古着ブームだった頃から現在のような
見方をしていれば、もっと詳細なデータが残せていたのかもしれないけど
その反面でもしかしたら、謎は謎のままとして分からないままなのも
それはそれで想像する楽しさもあって良いかなと考えたりする。
いずれにせよ古いデニムには、今回のようにまだまだ新しく解明される余地が
残されているので、一生掛かっても飽きないんだろうなと思わせてくれる。