リーバイス501XX 1950年代ギャラ入り紙パッチ 刻印16 Vol.2
前回のVol.1に続き501XXディテール編。
購入した当時は細部を注視することはあまりなかったが
最近はヴィンテージジーンズを分析したサイトなどもあり
古着ブームの90年代よりも確度が高い情報が見つかる。
この501XXは1955年から57年頃と推測しているが
細かいパーツを見ながら年代の特定とXXの特徴を書いて行こうと思う。
※年代判別はそれぞれ人によって見解が分かれるところもあり
様々な記述を見た上で、判断しているので多少の誤差はあると考えられる。
XX期の特徴の一つのオフセットベルトループ。
ベルトループがずれて付けられ、1953年頃から64年頃までの限定仕様。
大量生産の効率化を図る為に生地が重なる部分を避け
少しでも素早く進められるようにしたと言われている。
ウエストバンドの縫い付けが裏から見ると上がシングルステッチになっている。
シングルステッチ=フロントボタン付近をV字に縫う仕様になり
この縫い方は1960年代後半までに見られ、それ以降は上もチェーンになる。
表側から見えないバックポケット裏に付けられた隠しリベット。
これはジーンズが誕生した初期のリベットが外側に剥き出しに
付けられていた仕様に代わり、1937年から採用され1966年頃まで続いた。
リベット使いはリーバイスのこだわりの部分でもあったが
作業効率を上げる為に廃止されたと言われている。
隠しリベットの廃止とXX表記の終了はほぼ同じ頃で
ジーンズの伝統的な製法の終わりとも考えられている。
隠しリベットには製造された工場番号の「16」入り。
隠しリベット裏に数字の刻印が入る時期は、パッチ素材の移行時期と
リンクするようで、革パッチ終了の1950年代後半の物では無くなるようだ。
その後1962年頃のアルファベット刻印に移った時に
再度刻印が入るようだが、後に隠しリベットが廃止される。
この16工場はジーンズマニアには人気があり、謎の工場と言われている。
1950年代初めから70年代半ば頃までの物で少数の割合で見られ
年代にそぐわない古いパーツを使ったり、他の工場と違った作りが見られ
16刻印が入った物は、他の物よりも高値で取引される傾向にある。
ただし今回の物は、16工場が稼働を始めて間もない時期と考えられ
同じ年代の他工場製と差はあまりないと思われる。
ちなみに購入当時は16工場がどうだとかは言われていなかった。
ウエストバンドがシングルステッチだとV字に縫われると先程書いたが
これはV字のステッチが何故か見られず、解れて消失した跡もない。
基本的にV字ステッチが無くなることはないらしいのだが
もしかしたら端を縫い過ぎてV字に縫えなかったのかもしれない。
その後の60年代後半からはウエストバンド上がチェーンステッチになり
トップボタン横は二本の平行ステッチに変わる。
なので、これはV字ステッチが無くても旧仕様なのは変わらない。
実はV字ステッチが無いので、ビッグEとして売られていて
XXに付けられる値段よりもだいぶ安くなっていた。
知り合いの店だったので後から揉めるのも嫌なので
年代が間違っていることを確認し了承を得て、その場で即購入。
完璧にマイサイズなので逃す手はなかった。
左はトップボタンで、右はフライボタン。
トップボタンは文字がすっきり見えるボタンで1960年代後半からは
文字の周りが右のフライボタンのように文字回りにツブツブが入る。
このフライボタンは通称「足長R」と呼ばれ、左側の直線が長くなっている。
隣りのTの直線と比べると良く分かると思う。
足長R=紙パッチが定説だったらしいが、革パッチ後期でも使われ
足長Rは1954年頃から1970年代初め頃までに見られる。
同じく左はトップボタン裏で、右はフライボタン裏。
フライボタンは良く見ると細かくひし形の跡が見られる。
今回の物のボタン裏は工場番号の刻印は見られないが
これと同じ16工場製の物で古くても、新しくても有ったり無かったりする。
仕様的には隠しリベット裏の刻印がトップボタン裏に移る傾向にあるようで
「ボタン裏&隠しリベット裏両方あり」と「隠しリベットのみ」は
大体同じ時期で革パッチ最終の1950年代後半ぐらいまでで
「ボタン裏のみ」は50年代後半から62年ぐらいまでと思われる。
バックポケットに付けられた赤タブは両面に文字が入り
Vの文字が左右対称なことから、通称「均等V」と呼ばれる物。
1953年頃から60年代後半まで使われ、その後はVの右側が細くなる。
レーヨン製なので古い時期の物はくるっと丸まってしまう。
1973年頃にはLEVI'SのEが小文字に変更される。
大文字が「ビッグE」で小文字が「スモールe」と呼ばれる。
バックポケットの弓型のアーキュエイトステッチ。
ほとんど無くなっているが、黄色い綿糸で縫われている。
60年代後半からはオレンジ色の切れにくい丈夫な糸で縫われる。
ウォッチポケット、またはコインポケットの裏は耳無し。
XX期は耳がある場合と無い場合の両方が見られる。
ポケットの織り目が縦になっていれば、裏を見なくても耳無しが確定。
このリベットは裏側の突起が表側の中央を突き抜けるようになっている為
打ち抜きリベットと呼ばれ1962年頃まで使われた。
そしてこの時期は鉄製の銅メッキが施された物で錆が発生している。
銅メッキの打ち抜きタイプは1953年頃から62年頃まで使われ
革パッチ後期や紙パッチに変わった頃のギャラ入り期の特徴。
その後、裏側は銀色のアルミ製に変更される。
サイドのステッチは割と普通の長さ。
古い物は長かったり、極端に短かったりするようだ。
股の上部分にはカンヌキ無しもXXの特徴。
カンヌキは付け根にあるギザギザに入っている補強ステッチのこと。
四角く縫われた頂点にカンヌキが入るのは66年頃から。
裏側フライボタンの持ち出し部分。
二本針でチェーンステッチで縫われている部分はオレンジ色。
ステッチはかなり退色しているがオレンジとイエローが半々ぐらい。
ポケットのスレキ部分もダメージ無し、何やらスタンプがある。
裏側はデニムの色がかなり残っている。
ここを見ながら表面の色が濃かった時代を想像する。
スレキ部分の謎のスタンプ、下段は「S-6967」と入っている。
上段は見づらいが「H-5746」と「S-6967」が重なり×で消し
中段は「H-5746」を×で消しているようだ。
年代を特定するヒントになるのかもしれない。
細めに折られた耳の腰付近の部分。
若干だが赤耳の名残のピンク色があるような無いような。
裾はオリジナルのチェーンステッチで縫われている。
うねりが出て立体的になっているのにダメージは少ない。
古いデニム特有の頑丈さが良く表れている。
チェーンステッチとうねりの仕組みは↓
真のヴィンテージマニアから見れば、まだまだネタになる部分はあると思うが
その年代で見られる特徴的なディテールは大体書けたと思う。
今回Vol.1からVol.2と501XXについて長々と書いて来たが
総合的に見て範囲を絞ると、足長Rが採用された1954年以降から
ギャラ入り紙パッチ最終の1962年の間は確定していて
おそらくこの501XXは早ければ、紙パッチが使われ始めた1955年から
隠しリベット裏の数字刻印ありで、1957年辺りと推測した。
たくさんの現物を見比べて来た知識ではなく
過去の雑誌やネットで得た情報から考えた物なので
ドンピシャでなくても9割近くは合っているだろうと思っている。
久々に細部を掘り下げて見ると、今でもとても面白く発見もあり
ファッションや古着に熱中していた当時にこれらの知識があれば
もっと楽しかっただろうなと思ったりする。