REDWING COLUMN NO.65 レッドウィング ハトメ周りの緑青
緑青(ろくしょう)とは、金属に発生する錆の一種でその名の通り青緑色の錆のこと。
分かりやすく言うと、鎌倉の大仏や自由の女神などは元々茶色で
酸化によって変色し、あの印象的な青緑色になっていると言うこと。
レッドウィングのブーツではハトメ、もしくはカッコ良く言うとアイレット部分に
緑青が発生してしまい、レザーの質感やハトメの種類によって発生の度合いが違う。
レザージャケットやバッグのジッパー部分、ベルトのバックルでも緑青は発生し
アンティーク調の真鍮を使ったアイテムは特に発生しやすくなっている。
今回はレザーやブーツ好きにはある意味宿命とも言える、緑青に注目してみた。
緑青には左のドライなタイプと右のウェットなタイプがある。
おそらく厳密的には緑錆と青錆と分けられるようだが、詳しいことについては専門外。
空気中の酸素や接触面の水分などに反応して発生するらしく
レザーの油分や水分量で発生の頻度や量も変わって来る。
金属に発生する錆の多くは腐食によって劣化させる物だが
緑青はその金属を腐食から守る役目もあるようで、毒性もほとんど無いらしい。
なので完全な悪者と言う訳ではないので無理に取り除く必要もないが
一応見た目的な部分で気になってしまう方も多いと思う。
緑青のドライタイプ、エメラルドグリーンのような鮮やかな色。
ニッケル製のハトメや発生から比較的新しめの緑青の状態。
色鉛筆のような質感でポロポロと剥がれやすく、取り除くのは割と容易な方。
そしてとても厄介なウェットタイプの緑青、クレヨンや絵の具のような質感。
油分や水分量が多いレザーや真鍮製のハトメに発生しやすく
取り除いても早めに復活して来る、しぶといタイプ。
薄い色のパンツなどに色移りしやすく、注意が必要でもある。
ハトメの裏の菊割り部分とベロ側に接触している箇所には軽く残る。
2年前に丸洗いしてからほとんど履いていないので跡は控えめ。
着用を繰り返すともっとガッツリと跡が残る。
こんな感じで紐にも色移りはしてしまうが、これも致し方ない部分。
下の様に暗めの色は目立たなくなっている。
紐の色移りが気になる場合は思い切って違う物に代えるのもアリ。
緑青が発生しやすいレザーはフルグレインレザーと呼ばれる種類の物が多い。
革表面の毛穴や本来の質感が分かりやすいナチュラル系なレザーで
オイル感が強く手触りもヌメリがあるのが特徴的。
更に真鍮製のハトメは特に緑青が発生しやすい。
真鍮は銅を含んだ合金らしく、この銅成分が反応しやすいようだ。
ベックマンブーツや875、877などは塗装している真鍮製のハトメを使っている。
フック部分も年代や使われているパーツによっては緑青が多く発生する物がある。
左は90年代後半で右は90年代半ばの物、錆具合から材質が違う物が使われている。
黒いレザーは厚い塗膜が油分を中に閉じ込める為
左のようなレザーよりも緑青は若干出にくくなっている。
上の画像と同じ個体だが、裏の菊割り部分の素材の違いから
錆と緑青の具合はかなり違っているのが分かる。
こちらは緑青が発生しにくいレザーの種類。
油分を内部に閉じ込めているガラスレザーやパリッとしたレザーは出にくい。
ラフアウトもしくはスエードもオイルが少ないドライの質感の為、あまり出ない。
ただし、ラフアウトのモデルはハトメの表側はあまり緑青が出ないが
裏側はレザーの銀面に当たる為、若干の油分があるので多少は出ている様子。
緑青を取り除くには、つま楊枝のように細く先が尖った物でチマチマと
やって行くのがおそらく一番良いんじゃないかと思われる。
レザーが傷付かないように優しめにハトメの周囲の緑青を掻き出す。
メンテ好きの自分だけど、これはすごく嫌な作業。
ある程度取り除けたら、綿棒で軽く表面の残りカスを拭き取る。
柔らかい布やティッシュなどでも代用可能。
緑青の細かいカスがそこら中に散乱するのでブラッシングを忘れずに。
裏の菊割り部分が更に面倒くさくなっている。
同じくつま楊枝で掘り起こし、綿棒で表面を拭く。
仕上げでホールの中も軽く拭いて綺麗にしておき、ブラッシングで仕上げる。
こちら側ははっきり言ってあまり取れないので妥協が必要。
元々隠れる部分でもあるので軽く済ませるのも良いと思う。
左がメンテ済で右がメンテ前の状態、やけにみずみずしいウェットな緑青。
こう見るとまだやる余地があるが、これでも数分掛けて丁寧に行った。
6インチ丈ブーツ一足で全部やると56か所あり、ある程度で終わらせるのも必要。
同じく裏側の菊割り部分、左がメンテ後で右がメンテ前。
やはりアップで見るとまだまだ取れそうだなと思うが
あまり丁寧にやり過ぎると、一足で数時間とか普通に掛かってしまう。
しかも緑青は何度も復活して来るのが恐ろしい。
丸洗い時や黒いレザーなどはラフに拭き取ってしまって問題無いが
このレザーのように淡い色合いだと緑青が若干色移りする為
豪快に取り除くことが出来ず、やはりチマチマとやるのがベスト。
こちらは取り除きやすいドライタイプの緑青。
表側は結構取れるが、菊割りは奥側に残ってしまうのは致し方ない。
フックに見られた緑青は綿棒でぐりぐりと拭き、細かいところはつま楊枝を使った。
このレザーぐらいのトーンならラフに取ってしまっても良さそうなところ。
クリーナー類や重曹などを使って固めのブラシで取り除くのもアリ。
その場合はレザーを傷めないように慎重に行う必要がある。
緑青を取ろうかなと思って手に取ってチェックして見ると
こっちもやった方が良いかなと次第に増えて行く。
それぞれのブーツの紐を外しスタンバイさせておく。
紐をガチっと締めた状態や着用時もカッコ良いけど
紐を外した状態も妙に色っぽいなと改めて思ったりする。
ただここまでするとしっかりメンテするまでは棚に戻せなくなってしまう。
苦手な物理的に細かい作業は一気にやれるほどの集中力が無いので
飽きないように少しずつ進めるのが自分には合っていそうだ。