REDWING COLUMN NO.89 レッドウィング8176 メンテナンス編
今回はデッドストックで購入して数回着用の99年製8176のメンテナンス。
この8176は毎日ブラッシングをすると、レザーがどう変化するかを検証した個体で
2019年の元日から大晦日までの1年間ほぼ毎日数分間のブラッシングを行った。
元々ザラザラとしていた手触りがツルツルとした感じになり、光沢感も増したけど
劇的に変わったというほどではなく、時間を掛けた割に地味な結果というオチに。
ちなみにこのレザーはブラッククロームというクロム鞣しをした頑丈なレザーで
今回の8176は現在自分の所有している中で唯一の茶芯ではない個体。
オイル入れは2019年の10月にデリケートクリームを塗って以来になった。
右が今回メンテする8176、左の8179があまりにもレザーのきめが細かい個体で
何故こここまで質感が違うのかと、ブラッシングし続ければ左に近付けるかもという
淡い期待を込めつつ、1年間と期間を決めて検証してみたというところ。
左の8179は90年代半ば~後半のレッドウィングブームを起こした大人気モデルで
8176をベースに存在感のあるストームウェルトと、ヘビーなビブラムラグソールから
ノーマルウェルトと白いソールのスッキリとした仕様に変更となったモデル。
用意したメンテナンスアイテムは8179メンテナンス編と全く一緒。
シューキーパーに埃落とし兼仕上げ用のレッドウィングの馬毛ブラシと
塗布したクリーム類をレザーに馴染ませる為の硬い毛質の化繊ブラシ。
それぞれMモゥブレイの古いオイル除去や汚れ落としのステインリムーバーと
デリケートクリームに仕上げのクリームエッセンシャル、後は塗布用の布切れ。
ブラッククロームは表面の塗膜が厚くオイルが染み込みにくいレザーなので
自分は乳化性クリームを使って艶出しして仕上げることが多い。
紐を外しシューキーパーを入れて馬毛ブラシでブラッシングからメンテナンス開始。
ブーツメンテナンスはブラッシングに始まり、ブラッシングに終わるってぐらい
レザーを良い状態で保つには、オイル入れ以上に大切な工程だったりする。
羽根の内側は埃が溜まるので紐を外した時はブラシで掻き出しておきたい。
ついでにハトメ周りの緑青をチェックしてみたけど、この個体はほとんど見られない。
緑青が発生する条件は様々だが、油分が多いレザーと真鍮製のハトメが特に多くなる。
隅々までブラッシングをしたら、次はステインリムーバーを布に取って
表面の汚れ落としと古いクリームなどのオイルを除去する。
一見汚れている様にも見えるけど、単純にステインリムーバーの水分。
左がメンテナンス前で、右がステインリムーバー後の状態。
光沢感がなくなってマットな表情をしているのが分かる。
馬毛ブラシで布の繊維や埃などを落とし、レザー表面を整えて次の工程へ。
次はレザーの水分補給を兼ねて下地にデリケートクリームを全体に塗って行く。
指に取って馴染ませるように塗り込み、硬めの化繊ブラシや豚毛ブラシなどで整える。
ウェルトやコバ部分に履き口のパイピングなども忘れずに。
左がメンテナンス前で、右がデリケートクリーム+化繊ブラシでブラッシング済。
ブラッシングの頻度が違うので、左の方が光沢感があるけど近い雰囲気に戻った。
今回はここで終わりではなくて、もう一段階手を加えることにしている。
仕上げはこれ一本で汚れ落としに保革と艶出しまで可能なクリームエッセンシャル。
一般的な乳化性のクリームよりも伸びが良く、使いやすい上に有機溶剤不使用で
マルチ故のそこそこな性能がレッドウィングの艶出しにぴったりだったりする。
左がクリームを布に取って塗り込んだ後でややくすんでいるような状態。
中央は硬めの化繊ブラシでクリームのムラを伸ばし、表面に押し込むようにならし
最後の右が馬毛ブラシでさらに表面を整えるようにブラッシングして仕上げている。
画像では少し分かりづらいけど、中央よりも右の方がやや光沢感が増していて
照明が反射している部分の「L」や上の「ξ」みたいに見える周りの黒さに違いを感じる。
左がメンテナンス前で、右がメンテナンス後の状態。
乳化性クリームを塗ってブラッシングで仕上げた後のギラっとした光沢感が眩しくて
黒がより濃く見えるようになるのが、メンテナンスをしていて楽しく感じるところ。
お好みでここからさらにクロスで磨き上げるのもアリ。
最近はインソールのメンテナンスも欠かさないようにしているので状態をチェック。
ほとんど履いていないのもあるけど、やたらピカピカで抜群の状態の様子。
先程使ったクリームの染み込んだ布で一応内部を軽く拭いておいた。
8176は元々左の黄色×茶色の紐が付いているけど、これで履いたことは一度も無くて
以前所有していた8176も主張が強過ぎる気がして黒い紐に変更していた。
紐を両方とも黒×茶色に戻して8176のメンテナンス終了。
個人的に見慣れているせいもあって、やはりこちらのまとまった感じが落ち着く。
8176は近年復刻されたけど定番に戻ることなく、また廃番となってしまったのは
8179よりもやや重かったり、好き嫌いが分かれるアウトソールの仕様以外にも
合わせている紐の印象もあったのかもしれないと考えたりする。
今回の記事からPCなどの大きいディスプレイでも良い感じに見えるように
先日新たに購入したカメラで画質をかなり上げて撮影してみたところ
旧カメラよりもクリアで黒の深みが全然違っていて、ブーツがより一層男前に感じる。
新カメラの導入はブログのステップアップという決意みたいな意味もあったので
表現したい色味や捉えたい部分などを、より良く写すことが出来ればと思っている。
そしていよいよ今期のブーツシーズンも終盤という頃合いで、ブーツとの付き合い方も
実際に着用するより、秋に向けてや長期維持のメンテナンスをするモデルが多くなる。
湿気の多い季節はブラッシングと状態のチェックをいつも以上に気を付けたい。