デニムやジーンズの縦落ちとは?
「縦落ち(タテ落ち)」とは、ヴィンテージデニムに見られる特有の表情で
デニム生地に縦にすじが入るように色落ちすることを言う。
年代が古いほど荒々しく入り、新しくなるほど控えめになって行く。
この古いデニムの味のある風合いは、1990年代に見直され価値を高めて行き
現在はデニムメーカー各社から、当時の色落ちを研究し再現した物が販売されている。
ジーンズの色落ちなどの経年変化を味わう楽しみは
アメカジファッション好きには特に好まれる傾向にあり
かつてはデニムの縦落ちと言えば、プレミア感のある素材の代名詞でもあった。
他の記事に書いた茶芯レザーも、今回の縦落ちとほぼ同じ感覚で
新品はあくまでスタートに過ぎず、使い込んで自分の物にして行く良さがある。
デニムの縦落ち編 目次
デニム生地と縦落ちの仕組み
ジーンズやチノパンなどに使われる生地は、綾織やツイルと呼ばれる織り方で
織り目が斜め下に降りているようになっているのが分かる。
近年のデニムはとても均一で綺麗に斜めに入るように織られているのが特徴。
ちなみにこの右上から降りる物は右綾と言い、逆の物は左綾と呼ばれる。
捻じれが発生する場合は降りている方向に行くようになっている。
しかし古い時代のデニムは糸の太さが均一ではなかったり、織り機の性能から
織りムラが多く発生してしまい、その織りムラから縦糸が露出し凹凸が出来る。
その縦糸が早く退色してしまう為、縦落ちが発生すると言うことになる。
近くでしっかりと見ると、露出した部分の隣は隠れるようになる為
色が濃く残り、激しいコントラストが生まれると言う仕組み。
またデニムの染料も古い時代ほど、濃い物が使われている傾向にあり
糸一本一本の染め具合のムラも、色落ちの差が出来る要因とも言われている。
さらに、古い時代のデニムは激しい縮みなども加わり、不規則な凹凸感を生む。
この凹凸感が単純に色が薄い、濃いと言うだけではない深い表情に仕上がる。
これらは新しくなるにつれて、品質基準の変更や紡績技術の向上も加わり
徐々に風合いが変わって、1980年代頃に入ると一旦見られなくなるようになる。
耳のアタリなども古いデニム生地ほど出やすい表情の一つ。
ヴィンテージデニムの色落ち
リーバイス501の1950年代~80年代ヴィンテージの色落ち比較。
この三つは復刻などではなく当時のオリジナルの物。
残念ながら1960年代の物は手元に無い。
501XX1950年代後半~60年代初期頃のデニム生地。
荒々しい生地のムラ感が見られる、ヴィンテージ好き憧れのXXデニム。
色が青黒く残り、コントラストがとても美しい。
501 66前期1970年代初期~後半頃のインディゴの風合いが濃く残る最後の時期。
この時期の特徴はシャープな色落ちが見られる。
XXデニムよりもコントラストは控えめでライトブルーに色落ちが進む。
501赤耳1980年代の染料が旧時代の物から大きく変更された後のデニム。
1978年頃から合成インディゴにプラスして薬品が多く加わったと言われている。
縦落ちは見られるが色抜けが早く、コントラストはさらに出にくくなった。
三つを並べて比較、左からワイルドでオールディーな深みのあるXX。
縦落ち感がシャープな66は、ヴィンテージとしては入門編的な色合い。
マイルドで柔らかい印象の赤耳、同じ品番でも年代でかなり風合いは違う。
ついでに、70505ビッグE1960年代後半~70年代初め頃のデニム。
501とは違って生地に防縮加工が施されているが、色落ちはXXと66の中間的な物。
おまけの、ヴィンテージカバーオールのライトオンスのデニム生地。
1950年代後半から60年代初め頃と思われる物。
激しいムラ感が荒々しい縦落ちを生んでいる。
これを見ると古着のデニムはたまらないなと思ってしまう。
レプリカデニムの色落ち
そしてこれらはヴィンテージリーバイスのデニムを手本に作られた物で
復刻ジーンズ、もしくはレプリカジーンズ(デニム)と呼ばれる物。
左からエターナル883、ドゥニーム66、リーバイス501XX55年モデル。
色んな制約があるので完全再現は出来ないが、日本製の物は海外からの評価も高い。
レプリカジーンズのブームが始まったのは1990年代半ばぐらいからで
ヴィンテージデニムの値段が高騰した時期と重なり急成長した一つの文化。
色落ちに定評のあるエターナルがXX期頃を表現したデニム。
そこまでリーバイスらしさは追及しておらず、オリジナル要素が強い。
この生地は表面の凹凸感がとてもあり、ムラ感が強く色落ちは早め。
コントラストの差がくっきりと浮かび、テキトーに履いても良い色落ちになる。
ドゥニームの初期のオリゾンティが運営していた頃の66モデル。
1960年代後半から70年代頃を再現した、2000年前後に製造された物。
縦にすじが強く入る感じよりも、つぶつぶとした印象の色落ちの仕方は
ヴィンテージに引けを取らない、さすがドゥニームと言う感じ。
本家リーバイスが復刻したコーンミルズ社のXXデニム。
ムラ感が少なく縦落ち感は控えめで、1950年代の再現となると少し物足りない。
日本製のデニムメーカーに比べると当時の評価はイマイチだった。
後に覆ったのは自社工場の閉鎖に伴う物で、製品のクオリティーとは無関係。
国内メーカーが作った物の方が、縦落ちが入りやすく出来ている。
ひたすら履いてたまに洗えば、ある程度良い雰囲気に仕上がるが
リーバイスはとにかく色落ちが遅く、コントラストが生まれづらい。
このデニムは洗濯の回数が多いとあまり良い表情にならない。
最後は行き過ぎ感のある激しい縦落ちのデニム。
最近履き込んで育てているエターナルの811。
ここまで来ると、最早ヴィンテージっぽさとは違う雰囲気がある。
エターナルの883と同じデニムと聞いていたが、実際は全然別物だった。
この雨がざーざー降っているかのような激しい縦すじは「土砂降り落ち」や
「ストラクチャーデニム」とも言われているそうだ。
近年はヴィンテージなどの年代の解釈などと関係なく
表情としてこの様なデニムを採用する製品も見られる。
後書き
デニムやジーンズの縦落ち、自分と近い世代だと懐かしいと思う方もいると思う。
自分も実際懐かしいなと思いながら書いた部分もたくさんある。
今回振り返るように改めてデニムの風合いを注視してみた結果
オリジナルヴィンテージの風合いは、もう言うこと無しで素晴らしいが
自分で育てたレプリカデニムにも愛着や思いが詰まっていて優劣は付けづらい。
またお気に入りに加わるようなデニムを育てたいと言う思いに至った。