REDWING COLUMN NO.71 レッドウィング8165 丸洗い簡易版
今回はレッドウィング8165の丸洗いを「どぶ漬け」せずに簡易的にしてみた。
丸洗い時のどぶ漬けの有無には一長一短があって、レザーの色の違いや質感で
乾いた時の染みやムラなどの外観的な仕上がりの影響に加え
清潔さを得られる反面で内部構造の劣化などのリスクもあり、賛否の分かれるところ。
この黒いレザーの場合は丸洗いだけでは、外から見た感じの著しい変化がないので
ある程度ラフにやってもあまり失敗するようなことはない。
正直水拭きでサッと済ませても全然OKだったりするけど
それだと味気ないので色々と駆使してメンテナンスを楽しみたい。
※どぶ漬けとは水を入れた容器などに予め漬けておくこと。
色が薄い物を洗う場合は、しばらく漬けておいた方が綺麗に仕上がる。
今回の丸洗いの目的
このブーツは表面のコーティング感が強いブラッククロームというレザー。
シワの部分には長年のオイルやクリームやらが溜まっている様子。
今回は内部を洗わないので全体を綺麗にしたいというよりも
古いオイルを抜いて表側のリフレッシュが目的という感じ。
折角なので分かりやすい箇所として、ウェルトのステッチの部分を撮っておいた。
やや黒ずんでいて、正直ここぐらいにしか丸洗い後の変化は期待出来なかった。
メンテナンスに必要なアイテム類
今回の丸洗いに用意したアイテムはこれら。
使い古しのバスタオル、化繊ブラシ、馬毛ブラシ、クリーム塗布用の布切れ
モゥブレイのデリケートクリームに同じくクリームエッセンシャル。
レクソルクリーナー、歯ブラシ、コロンブスのジャーマンブラシ。
洗浄
紐を外しブラッシングを済ませ、ぬるま湯でブーツ全体を軽く湿らせる。
シャワーや蛇口からだと中も濡れやすいので、ブラシを使って濡らした。
お湯の温度は人肌ぐらいがベストだと思う。
レザー製品に定評のある、レクソルクリーナーを使って洗って行く。
使い古しの歯ブラシでウェルトのステッチをシャカシャカとブラッシング。
クリーナーは水に溶いて薄めて使うのが基本的な使い方だけど
自分はブラシに原液のまま付けて濃いめで洗浄している。
どうやら最近レクソルはパッケージデザインが変更になったらしい。
ハトメの菊割り部分の取りづらい緑青もこの時ばかりは大胆にブラシで擦って落とす。
色が薄いレザーやブラシの毛が硬い場合はこうは出来ないので注意。
続いてブーツ本体を馬毛のジャーマンブラシでゴシゴシと洗って行く。
直線的にやったり円を描いたり、シワの方向を意識したりと
レザーの形状や雰囲気を感じながらブラッシングする。
ブラシの方がレザーの細かい凹凸の汚れが落ちやすいので好んで使っているが
表面が滑らかなレザーだったり、ソフトに洗いたい場合はスポンジが良い。
アウトソールも軽くクリーナーで洗っておく。
徹底的に綺麗にしたい場合は毛の硬いタワシなどを使うと良い。
今回はブーツ内部は一切洗わないので水が入らないように慎重に行ったが
いつもの丸洗いに比べて若干の物足りなさはあった。
紐はクリーナーとぬるま湯で揉み洗いし、ブラシで軽く擦って仕上げる。
洗う為の洗剤はレクソルクリーナーじゃなくても良いし、ブラシも他の物でも可。
濯ぎ・乾燥
ブラシを良く濯ぎ洗いし、毛に含まれている水分を使って
撫でるようにブーツ本体に残っているクリーナーの泡を洗い流す。
ブラッシングだけだとかなり残るが、レクソルクリーナーは無理に濯がなくても
元々レザーに優しい中性洗剤なので、残った物は拭き取れば問題ない。
この辺りの使い勝手の良さは多くの方に支持されているだけのことはある。
濯ぎが終わったら、大きめのタオルを使ってしっかりと拭いて水気を取り除く。
羽根の付け根やウェルト部分などは水気が残りやすいので入念に行う。
最早この状態で半乾き以上の状態ではある。
ブーツ内部の通気を良くする為、斜めに立てかけて陰干しする。
表面の水気がもう少し抜けるまで、状態を見ながらしばらく放置。
内部はさっきまで履いていたぐらいの軽い湿り気はあるけど
べちゃべちゃに水が染み込んでいる感じはしない。
水気を良く切った紐も一緒に陰干しして乾燥させておく。
陰干しも数時間が経過し、表面の水気はあまり感じられなくなったので次の工程へ。
この8165とは比較的長い付き合いだけど、すっぴん状態は初めて見たかもしれない。
普段気付かなかった小傷もたくさんあって新鮮な感じがした。
オイルアップ・仕上げ
丸洗い鉄則の半渇きでのオイルアップには、レザーに潤いと栄養を与える効果が高い
モゥブレイのデリケートクリームをチョイスした。
使い方などは最近記事にしたが、クリームを薄く伸ばしながら塗り込み
化繊ブラシなどでさらに奥へ押し込むようにブラッシングする。
コバ部分はかなりカサつくので特にしっかりと塗り込むと良い。
その後はまた立てかけて風通しの良い場所で丸一日陰干し。
※油分や水分の抜けたレザーは強度が低下し、この時の著しい劣化を防ぐ為にも
完全に乾く前にオイルやクリームなどの油分を補給することが推奨されている。
荒天などで激しく濡らしてしまった後もオイルアップをすると良く
これはお風呂上がりのお肌のケアの化粧水と一緒のイメージ。
翌日ほぼ乾いたので、モゥブレイのクリームエッセンシャルで仕上げる。
密ロウ入りのクリームでややギラっとした光沢感が出る。
布に取って薄く伸ばしながら塗り込み、化繊ブラシ馬毛ブラシの順でブラッシング。
光沢感を抑えたい場合はミンクオイルなどの好みの物をチョイスする。
内部のレザーインソールにもクリームエッセンシャルを塗って
インソールにも栄養補給させて、仕上げに布で乾拭きもしておく。
最近はこの部分のオイル入れがかなり重要だと思っている。
左が丸洗い前で右が丸洗い後。
右の方が光沢感が増して黒さに深みが出たかなって感じ。
丸洗いは見た目で変化がないとガッカリ感があるかもしれないけど
古い油分が抜けて表面は相当フレッシュな状態になっている。
今後も長く良い状態でいる為のデトックスみたいな物でもあると思う。
今度は上が丸洗い前で下が丸洗い後。
製造されてから25年以上溜まっていた様々な汚れがなくなっていて
これはさすがに分かりやすいぐらいに綺麗になっている。
ウェルトのコバは丸洗い後そのままだとボソボソっとした感じになってしまうので
クリームエッセンシャルを塗布しブラッシングで光沢を出した。
レザーが潤ってギラっとした光沢はあるけど補色はしていないので
トゥなどの傷が茶色く見える、所謂「茶芯」の感じは健在。
油分が抜けると色が薄くなって、茶色味が増して雰囲気が出て来るけど
それはまた今後の一つの楽しみでもある。
終わりに
一応このままもう着用しても問題無いけど、陰干しの乾燥期間がやや短めなので
ウェルトの縫い糸や本体との隙間に水分が残っている可能性もある。
すぐに箱や玄関の下駄箱などにしまうと次のシーズンに見たら「カビが!」
なんてことになってしまわないように、もうしばらく陰干しで様子を見た方が無難。
たくさんのブーツを丸洗いして来た経験上、乾燥工程が物凄く大切で
自宅環境では湿度の低い時期に行うのが、成功する為の大きな要因だと思う。
梅雨入りしてジメジメとする前の、このカラッとした過ごしやすい時期
またはGWのネタに困っている方はトライしてみるには良い機会かもしれない。