いつかその内と後回しになっていた、15年ほど使用しているレザーの長財布のメンテナンスを行った。
何かのついでにささっとオイル入れをしたことはあったけど、ここまでするのは初めてのこと。
自分が使用している財布は、東京都台東区の革製品を扱うメーカーのオーパス(OPUS)というブランドで
詳しくは知らなかったけど、ライトニングなどの雑誌掲載やデニムメーカーとの絡みが多いらしい。
元になるベースのデザインに、表のレザーの種類と色を選んでウォレットチェーン用のパーツを追加する
所謂セミオーダーだったはずだけど、レザーの種類を何にしたかや値段などは全く覚えていない。
ネットで販売されているオーパスの相場からして、おそらく3万円~4万円辺りだったと思われる。
確かなことと言えば、当時履き込み中のジーンズに合わせていたベルトとベックマンに近い色を選んだこと。
このジーンズは既に育成終了しているので、今回メンテナンスした財布との組み合わせは久しぶりで
ベルトも何年か前にメンテナンスしたけど、オイルが抜けてだいぶ色が薄くなったように思う。
黄色く囲んだところに染みがあることに気付き、おそらく汗で濡れて出来てしまった物と思われ
ここはジーンズのポケットからはみ出る部分なので、酷くなってしまう前に何とかしておきたい。
右側の矢印の部分は随分前からあって、今回のメンテナンスでは落とすことは出来なかった。
ヌメ革を使っている内側の部分は、小銭の出し入れなどで頻繁に触る箇所にはかなりの黒ずみが見られ
使い込んだ味として風合いを残しつつも綺麗に出来ればと、こちら側も汚れを落として行く。
まるでブーツをがっつりメンテナンスするかのような、今回はこれらのアイテムを用意した。
ボトル類は全てモゥブレィの製品で、左上から汚れ落としのステインクレンジングウォーター
カビ予防のモールドクリーナー、ベースの保湿用にデリケートクリーム、艶出しのクリームエッセンシャル。
埃落としなどのブラッシング用にレッドウィングの馬毛ブラシ、汚れ落としには持ち手付きジャーマンブラシ
クリーム類の塗り込みと仕上げに使う化繊ブラシ、水拭きや汚れ落としに使う布類をそれぞれ数枚。
それではメンテナンス開始ということで、先ずはブラッシングから行ってレザーの状態を観察し
汚れの具合や油分が足りていない箇所など、重点的に手を加えるポイントを把握する。
内側の普段は隠れていて触らない箇所であっても、この機会なのでブラッシングして埃などを取り除く。
こちら側のブラッシングは入手してから一度もなかったので、何だか不思議な気分になったりした。
内外のブラッシングが終わったら、クリーナーを使う前に使い捨てのショップタオルで水拭き。
ショップタオルは紙製なのに繊維カスもほとんど出ない為、黒いナイロンアウターみたいなアイテムにも
ガシガシと使えるのがとても便利なので、ここ何年かは常にストックしていたりする。
そこまで汚れていないと思っていたけど、ショップタオルを裏返すと予想以上に色が出ていた。
これは完全に皮脂汚れだなっていう臭いもしたので、ジーンズのバックポケットに入れるのなら
今後は毎年夏の終わりとか、どこかの節目に一度はやっておいた方が良いかもしれない。
内側はとにかく水気をしっかりと絞り、カードのポケットなど軽く届く範囲内で拭いておく。
ジッパーの部分などの金属パーツも意外と汚れているのでしっかりと行っておく。
汚れ落としの本番には、ステインクレンジングウォーターとジャーマンブラシを使う。
ステインクレンジングウォーターは何度か登場しているけど、オリーブオイルやホホバオイルなどの
天然成分から出来ていて、汚れを落としつつ過度な油分を取り除かない、レザーや肌にも優しいクリーナー。
そしてジャーマンブラシは馬毛を使用しているので、デリケートな質感のレザーにも使いやすい。
ステインクレンジングウォーターは起泡性の為、こんな風にブラシと組み合わせると細かい毛穴から
かき出すように汚れを取り除いてくれるので、アイテムや質感によっては豪快に行えるのが楽しい。
以前何かの記事にも書いたと思うけど、簡易的な丸洗い用としても使うのも良い感じ。
ショップタオルで泡を取り除くと、物凄い色が出ていてレザーの色もあると思うけど皮脂汚れがメイン。
色が落ち着くまでステインクレンジングウォーターでブラッシングして、最後は水拭きで拭き取った。
内側は繊細に汚れを落としたいということで、使う物を変えて布で汚れを落として行く。
ちなみに元々随分昔に買ったTシャツで、外で着る→部屋着→穴が開く→切ってメンテナンス用という流れ。
想像以上に布が茶色になっていて、やはりこちら側も15年の汚れが蓄積していた様子。
当然だけど黒ずんでいたところだけで、隠れている部分などからはほぼ色は出なかった。
表側の水拭きとクリーナーの水分が落ち着いたら、デリケートクリームを指で塗り込んで行く。
擦れて色が薄くなった箇所や屈曲して負荷が掛かる場所は多めにし、化繊ブラシでしっかりと馴染ませる。
内側はヌメ革ということで、ムラにならないように外側よりも手早く行っておく。
デリケートクリームの成分だけでも、レザーの色が深まって良い感じになっている様子。
カビ予防のモールドクリーナーは順番がややこしくなるけど、今回の場合は仕上げの一つ前に入れるので
デリケートクリーム→モールドクリーナーになり、デリケートクリームのみならその前ということになる。
起毛面は直接スプレーを吹きかけ、表使いの場所は布に取って軽く塗ってならしておく。
外側もモールドクリーナーを塗り終わってしばらく放置して、いよいよ最後の仕上げの工程に入る。
毎度おなじみのクリームエッセンシャルを布に取って内外に塗り、化繊ブラシと馬毛ブラシで馴染ませる。
クリームエッセンシャルはこれ1本で汚れ落としから保革に、艶出しまでが出来る便利アイテムで
有機溶剤不使用という点も優れ、今回の財布みたいに直接肌に触れる物には特に適していると思う。
全体が潤ってかさつきもなくなり、引っ搔いたような細かい傷は目立たなくなった。
まだちょっと表面がペタペタとしているけど、これはすぐに馴染むので問題ない感じ。
左が今回のメンテナンス前で、右側がメンテナンス後の表側の状態の比較画像。
折り返した時の左半面が主に表を向く方で、細かい傷や色抜けはクリーム類の油分だけで充分に色が戻り
右半面は小傷は少ないものの、ジーンズの色やお尻の汗をダイレクトに吸収していた黒ずみが落ち着いた。
メンテナンス前に一番気になっていた左下付近にあった染みは、この様にほとんど消すことが出来た。
カビではないから大丈夫と思っていたけど、ここが綺麗にならなかったらこの記事はお蔵入りだった。
同じく左がメンテナンス前で右側がメンテナンス後となっていて、明らかに表情が変わったのが分かる。
油分が足りていなかった訳ではないと思うけど、メンテナンス前は顔色が悪いというか黒ずみが目立ち
メンテナンス後は二段階ぐらい色が濃くなって、ある意味健康的な活き活きとした感じになった。
撮影の仕方でアフターは黒っぽく映っているけど、その黒ずみがあった場所は茶色くグラデーション掛かり
使い込んでいる風合いがしっかりと残ったままの状態で仕上がっているのは狙い通り。
ヌメ革なので部分的な染みは、もうほくろみたいに消えない物と思うようにしている。
こうやって見てみたら、バックポケットから財布が結構がっつりとはみ出していたんだなと思ったのと
傷や汚れはそれなりにあっても、著しい劣化やステッチの解れが全くなかったのにはちょっと感動した。
それとレザーアイテムのメンテナンスは単純に楽しくて、やはり充実感のある良い趣味だなと改めて思うし
このままだと更に15年後も良い状態を保てそうな気がして、新調するタイミングが分からなくなる。