メルトンカンパニー メルトンPコート
名前がややこしいが、メルトンという米国のブランドのメルトン素材のPコート。
Pコートは海軍や漁師などの海で働く者たちが船の上で寒さから身を守る為に
愛用していた伝統的なコートで、一部ではPジャケットとも言うらしい。
巷でのPコート需要も落ち着き、色んな意味で機が熟したかなということで
高校生の時以来の25年振りぐらいにしっかり着てみることにした。
程良くスリムで丈の長さもありつつ、特に飾りもないシンプルでベーシックな形。
これは何年か前に1シーズン使用したぐらいの美品を中古で購入した物で
驚くほどの安価な値段で販売されていて、いつか着たくなるかもと思って
しばらく寝かせていたけど意外と早く出番が来ることになった。
Pコートの流行は大まかに1990年代前半と2000年代後半からの二回あり
何年か前までは冬物アウターと言えば、黒のPコートが大本命みたいな感じで
どこもかしこも毎年プッシュして、市場に出回り過ぎて飽きられた感が強く
おそらく世代によっては食傷気味なアイテムになるかもしれない。
メルトンの母体は1917年に米国ニューヨークで設立されたシャツを生産する会社で
主に大手企業や米軍などのウール素材の製品を広く請け負っていた歴史あるブランド。
ヴィンテージ古着が好きな方なら目にしたことがあるかもしれない。
現在は別の会社が運営していたり、ライセンス商品が作られていたりするようだけど
購入の決め手となったのはやはりこの「MADE IN U.S.A」のタグ。
おそらく比較的近年の物と思われ定価は4~5万円というところだろうか。
メルトン素材はウール80%ナイロン20%という定番的な割合の物。
Pコートの名前の由来には諸説あるらしいけど、この生地の感じの粗い毛織物を
オランダ語で「pije(ピー)」と言うらしくて、それが有力とされているそうだ。
他にはパイロットコートなどという説もあるとのこと。
生地の厚みをどう表現するか迷ったので立ててみたところ、こんな感じで自立した。
重量を量ったところ1.4㎏ほどあり、ヴィンテージ物のずっしりさはないけど
量販店っぽい薄くて軽い訳でもなく、クオリティーと実用性のちょうど良いところ。
Pコート言えばこの大きいイカリボタン。
このデザインは1930年代頃から広く使われるようになったらしい。
これは10ボタンタイプのクラシカルなスタイルを採用していて
このままだと見えないが一応襟の裏に2個付いている。
1950年代に入るとボタンの数が減り、8個(見える部分が6個)が主流になるとのこと。
Pコートの特徴的な仕様として、左右どちらでも上にして着ることが出来るのは
風向きでボタンを掛け替えて風の侵入を防ぐ為に考えられたもの。
昔はそういう知識がなかったので、メンズとレディース兼用なのかなと思っていた。
やや高めの位置に付けられたハンドウォーマーポケットには
柔らかいフェルト生地が貼られていて手触りが良くて暖かい。
ライニングは近年らしい作りの中綿入りのキルティングを採用していて
自分の住んでいる地域では真冬でも深夜早朝じゃなければ、これぐらいで事足りる。
こういうパーカーとかキレイめなシャツのコーディネートは気分じゃないので
個人的にはもっとラフというか、男気のあるアイテムをチョイスしたい。
左はかつて米軍で使用され、Pコートと親和性の高いシャンブレーシャツとチノパンを
近年のサイズ感に落とし込んだ物で、足元はポストマンのお手本的なコーディネート。
右はちらっと見えるGジャンもモノトーンに統一したコーディネートで
ブーツはスーパーソールにしてモード感を出し、黒のレザーグローブを着けてみた。
このブラックジーンズの中太な感じが年齢的に妙に落ち着くというか
アメカジ好きというのが客観的に見ても分かってしまう。
今回はPコートというアイテムの背景を知った上で着たこともあって
懐かしさよりも少し背筋がピンと伸びる様な感覚だったかもしれない。
Pコートは比較的長いこと冬の主流アイテムだった反動で需要が減り
最近は中古取引ではなかなか価格が付かない状態にあるらしく
自分みたいにあまり流行のファッションを意識しないスタイルだと
久々にPコートを着たり探すにはちょうど良いタイミングだと思う。