REDWING COLUMN NO.30 レッドウィング 90年代ブラッククローム
レッドウィングに使われる黒のレザー「ブラッククローム」
ブラッククロームは精製方法の変化もあり
時期によって異なった質感の物が見られる。
特に日本での需要が多かった90年代に大きく仕様変更され
ヴィンテージ感のある物、現行方式に近い風合いの物
その中間的な雰囲気の物などに分かれている。
仕様変更と言っても、全て刷新されることはなく
旧方式は何年間も混在し、いつからはコレと厳密に括るのは難しい。
一般的には年代が古い物ほど、使用されるレザーは
分厚く硬い物とされ、足に馴染むまで時間が掛かってしまう。
反対に現行のレザーに近く、柔らかく履きやすい物は
90年代終わり頃から徐々に増えて行ったとされている。
その違いや履き心地は文章で伝わりづらいところがあるので
ここでは見た目を中心に書いてみようと思う。
REDWING 90年代ブラッククローム編 目次
ブラッククロームとは
そもそもブラッククロームとは?
ブラッククロームは皮から革へと精製する過程で使用する
「塩基性硫酸クロム」と言う薬品の名前から来ているそうだ。
クロム鞣しをするとレザーは、淡い青や灰色のような色に染まり
「ウェットブルー」と言う名前のベースの状態になり
そこから表面を黒くコーティングし、ブラッククロームとなるとのこと。
このレザーの特徴は耐久性に優れ、変色しにくく
表面のコーティングが強いので、油分が抜けにくい。
なのであまり手を加えなくても状態を保つことが出来る。
他の種類のレザーでは致命的になるカビや多少の汚れ程度なら
軽いメンテナンスをするだけで、ほぼ元通りにすることが可能。
と言う訳で、手持ちのブラッククロームのモデルを
例にいくつか見比べて見ようと思う。
シワの入り方
㊧はシワがあまり入らない物、㊨はシワがたくさん入っている物。
古い物ほど深いシワが入りやすいが、これは㊧の方が古い物になっている。
使っている部位や方向で大きく変わってくるらしい。
㊧はこちら↓
㊨はこちら↓
同じ個体で左右が全く違うなんてことは、最早普通のこと。
原皮となる牛の背中は密度が高く、肩はシワが入りやすいとのこと。
同じ部位でもどちらかに寄っていれば、シワの入り方が変わってくるようだ。
艶感の違い
艶感が全く違い、極端に光沢感が違う物を並べてみた。
㊧は塗膜が厚く光沢感が強い物、これは97.8年頃までの物に見られる。
「艶あり」の当り個体と言われる場合もある。
㊨は光沢感が控えめの物、カリっとした質感でしっかりしている。
90年代終わり頃からはマットで柔らかい物と混在して行く。
㊧はこちら↓
㊨はこちら↓
同じく㊧は艶感強め、㊨は艶感弱め。
両方とも艶出しのクリームなどは塗っていない。
若いメス牛だと艶感が強いとか、どうだとかがあるらしい。
質感の違い
表面のきめ細かさ、これは艶感の違いと被るところがあるが
左右で手触りが違い㊧はツルツル、㊨はややざらつきがある。
一見両方とも光沢感があるが、下に敷いているマットと
こちら側の写り込む感じに差があるのが分かる。
きめ細かい物が混在するのは、90年代終わり頃までと思われる。
㊧はこちら↓
㊨はこちら↓
茶芯~灰芯
レザーの断面、ここがブラッククロームの一番の見どころ。
画像はハトメ付近の本体サイド部分とベロが重なり、2枚になっている部分。
レザーの表面を銀面、起毛した裏面を床面と言い、共に黒く加工されている。
ここではその中間の芯となる部分の色を見ることになる。
㊧茶芯は簡単に言えば、茶色のレザーを黒くコーティングした物。
㊨は芯が灰色で最初からブラッククローム用に作られたレザー。
㊥は茶芯と灰芯の中間的な物、人によってどちらにするか分かれる。
個人的にはベージュ芯、もしくは薄茶芯と呼んでいる。
こちらも別の部分の断面の画像。
古い順に㊧㊨㊥の順、厳密な撮り方ではないが古い革ほど厚みがある。
㊥のベージュ芯の物は厚みを抑えた現行のような感じだが
色付けは旧式の作り方をしている為、芯の部分が荒々しい。
上の二つの画像と同じ物のベロの画像。
㊧㊥は断面と同じ色になっている。
ベロの色が茶色であれば茶芯の可能性が高いが
他の部分の断面のチェックが重要になる。
㊨芯とは別の黒色、灰芯はベロが灰色の物も多い。
完全に茶芯と呼べる物は90年代いっぱいぐらいまでと思われ
2000年代からは茶色が薄かったり、判断が難しい物が見られる。
㊧はこちら↓
90年代ではないが㊥はこちら↓
㊨はこちら↓
本体が茶芯でも、ベロが灰芯の物になると
㊨のように断面が茶色と灰色のミックスになる。
ベロは分厚い物と少し薄い物がランダムに付けられ
比較的古い物でもミックスのパターンが見られる。
㊨はこちら↓
直射日光下で確認
室内の照明で見るよりも直射日光で見た方が
個体ごとのブラッククロームの本来のポテンシャルが良く分かる。
90年代後期の茶芯、室内の照明下では普通の黒に見えるが
直射日光に当てると傷が入るだけで茶色になり
黒の奥に茶色が透けて見えるような感じ。
㊧はこちら↓
㊨はこちら↓
傷が少ないのもあるが、灰芯やベージュ芯は
直射日光下でもあまり表面の雰囲気は変わらない。
こうやって見ると㊧の8133は茶芯に見えるので悩ましい。
㊨は毎日ブラッシングしている8176。
ヴィンテージ感のある茶芯の物、㊨のロガーはまだ記事になっていない。
90年代半ばぐらいの茶芯は赤茶っぽく、とてもはっきりしている。
茶芯に関しては、もう少し詳しく別の機会に書きたいと思う。
㊧はこちら↓
㊨はこちら↓
レッドウィングのディープな部分にハマり出したのは
ブラッククロームの違いを観察するようになってから。
昔は黒はどれも同じみたいに、軽視していた部分があった。
だが十数年ぐらい前にショップで見た新品のブラッククロームが
自分の履いていた物と全くの別物でとても驚いた。
レッドウィングからしばらく離れていた間にこうも変わったのかと。
そこから自分が好んで履いていた90年代の物を
少しずつ集めるようになって、今に至ると言う訳だ。