REDWING COLUMN NO.11 レッドウィング メンテナンス 丸洗い総合版
レッドウィングのブーツの丸洗いの仕方と
それぞれの工程で用意したいアイテム類の紹介など
今までに何足も丸洗いをして来た経験と感想をまとめてみた。
※丸洗いとは水や洗剤を使い、その物全体を洗うこと。
革製品の水洗いは永らくタブーとされていたが
近年は一般的なメンテナンス方法として確立されつつある。
それぞれの具体的な記録は各記事をご覧ください。
難易度は高い、丸洗い後の変化はそこそこあり。
オイルド感の強い赤茶や茶系は、染みが出来やすい素材なので
黒ずみを落とすのが難しく、オイル抜きのリフレッシュ要素強め。
難易度中、色が薄い革の場合は丸洗い後の変化がかなりある。
オイル染みやインディゴなどの頑固な汚れを落とすのは厳しいが
薄汚れは簡単に綺麗になるので、やりがいがある素材。
難易度は低い、丸洗い後の変化はあまりない。
オイル入れや水拭きだけで、汚れ落としが出来るので
見た目よりも内部や臭い落としが目的になるかもしれない。
REDWING メンテナンス 丸洗い総合版 目次
丸洗い時に用意したいアイテム
(画像の物が全て必要と言う訳ではありません)
・洗浄用アイテム
除菌シート、その革質に合ったレザークリーナー。
革用ブラシ、アウトソールとインソール用のナイロンブラシ。
(ブーツ内外をソフトに洗いたい場合は食器用スポンジなど)
・どぶ漬け用アイテム
洗濯バスケットやバケツなど深さのある容器。
浮き上がり防止のビンやペットボトル。
・乾燥用アイテム
大き目のタオル、新聞紙(インク移りが気になる場合はキッチンペーパーなど)
・乾燥時のブーツ内外のオイルアップ用アイテム
デリケートクリームなどの浸透性の高いオイル類(普段使いの物でもOK)
・仕上げ用アイテム
それぞれお好みのオイルやクリームなど。
仕上げ用ブラシ、スエードの場合はスエード用ブラシ。
一回の為だけに色々と買い揃えるのは、それなりに費用が掛かるので
出来るだけ手持ちの物や、100均などで賄うのが良いと思う。
個人的にはレクソルクリーナー&コンディショナー
モゥブレイのデリケートクリーム、持ち手付きの豚毛ブラシはおススメ。
予洗
予洗は文字の通り、予め洗っておくこと。
普段のメンテと一緒で、ひもを外し隅々までブラッシング。
ハトメに緑青がある場合は、事前に取り除いておいた方が良い。
除菌シートでブーツ内のインソールなどをしっかり除菌。
カビが生えていたりすると、単純に擦っただけでは
乾いた時にほぼ再生するので、これは忘れずに。
ブーツ表面は水で軽く洗い流しておき
内部に水を入れ、指先の奥の方に詰まったゴミを出しておく。
ウェルトの部分はナイロンブラシ(歯ブラシでも良い)を使い
ステッチや本体との間の埃などを掻き出す。
アウトソールは泥汚れなどをしっかりと落とす。
ナイロンブラシやタワシなど硬い素材を使う。
徹底的に綺麗にしたい場合は、クレンザー的な物を使うか
仕上げ工程で紙やすりで削るなどの方法もあり。
どぶ漬け(半日~一日)
どぶ漬けは、汲み置いた水やお湯に漬けること。
水が浸透しにくい革の場合は、半日から一日ほど掛けて漬ける。
明確に何時間と言うのは難しいが、夜洗いたいなら朝に漬け
夜通し漬けて翌朝に洗うなど、大まかなスケジューリングをしておく。
温度は高過ぎると革にダメージがあるので、38~40℃ぐらいが良い。
このぐらいの温度だとオイルやクリームが溶け落ちるが
アウトソールの接着剤は溶けないので、剥がれのリスクが下がる。
臭い落としで重曹や洗剤類を使って漬ける場合は短時間のみで
長時間漬けこむ場合は水、もしくはお湯のみにする。
(どぶ漬けは人によって意見が分かれる所なので絶対ではない)
浮き上がり防止に水を入れたペットボトルを使う。
ブーツに入れば入れて、入らなければ浮かべておく。
水分が完全に浸透した革はとても柔らかくなり
プニプニした質感になるが、乾けば硬化する。
長時間漬けておくと、この様に結構色が出て来る。
これは染色した革の色やオイルなどの他に、内外の汚れや汗による物など。
インソールやその下のコルク層からも、かなり沁み出て来る。
余裕があれば新しい水、またはお湯に交換。
どぶ漬けのメリットは、汚れが落としやすくなる。
部分的な汚れを落とすには、全体を濡らした方が
乾いた時の水染みを防ぎ、そのムラを抑えることが出来る。
ブーツに限ったことではなく、バッグやジャケットなどの汚れ落としや
他の素材の物を洗濯する時にも共通していること。
デメリットは失敗する可能性もあると言うこと。
変色や色移りなど、革の表情が劇的に変わることや
インソールの変形などのリスクが考えられる。
単純に放置時間が必要なので、急な予定が入ると大変なことになってしまう。
↑はどぶ漬けをしない丸洗いの簡易版。
画像の物は、おそらく水に中途半端に漬けた物。
水染みが残ってしまう典型的な失敗パターン。
汚れや溶け出たオイルなどが逃げ場を失い、染みとなって留まってしまう。
特に色が薄い革だと、洗う前よりひどくなる場合があるので
漬けないなら漬けずに、割り切って丸洗いを行う。
こちらの画像は、酸素系漂白剤に漬けた方の物。
左から赤茶8166、薄茶875、ラフ&タフ9111。
本来はどれもオイルド感の強い、味わい深い色なのだが
汚れと共に革の色も落とし、油分が抜け過ぎてしまっている。
漂白剤が強烈過ぎるので、はっきり言って劣化した状態。
オイル入れや補色で取り戻せる部分もあるが
汚れを落とす目的以上に、良い部分を犠牲にし過ぎている気がする。
人それぞれだとは思うが、自分は愛着がある物でやろうとは思わない。
洗浄
クリーナーを使い、豚毛ブラシや硬くないナイロンブラシなどで洗う。
毛穴から汚れをしっかりと掻き出すイメージ。
レクソルはシャンプータイプなので、一般的には水に溶いて使うが
歯磨きの様にブラシに直接掛けて、ガッツリと洗うのが良い。
これは革に優しい中性で出来ているので愛用している。
レザークリーナーは有名どころだと、他にサドルソープと言う
石鹸タイプもあるので、お好みの物を使うと良い。
もし代用品で済ませるなら、中性洗剤か最低でも弱酸性の物を使用する。
アルカリ性の物は汚れは落ちるが、革の色ごと落とし劣化するので注意。
スエードは表面が起毛しているので
硬めのナイロンブラシでガシガシ洗うことも可能。
デリケートな革質もしくは、そう洗いたい場合は
食器用スポンジなどで優しく洗う。
インソールは洗い過ぎると、縁が反って来たりと変形に繋がるので
あまりガッツリ洗わない方が良いとのことだが
カビが生えていたり、中古で購入した場合は
個人的には容赦なく洗った方が良いと思う。
本体との隙間に靴下の毛玉やら埃などが溜まっているので
持ち手の長いブラシで掻き出して取り除く。
どぶ漬けすると革の色がアウトソールに多少移るので
側面のミッドソールの繋ぎ目もしっかりと洗っておく。
ついでにひもも一緒に洗い、革製の場合は乾く前のオイルアップを忘れずに。
濯ぎ、タオルドライ
ブーツ内外をしっかり濯ぎ、泡を落とす。
革専用のクリーナーは革に優しいので、多少濯ぎ残しがあっても問題ない。
代用品を使用した場合は、徹底的に濯ぐ必要がある。
タオルドライは大き目の物で、表面をしっかりと拭く。
脱水機を使うと、内部の色が表に移ってしまう可能性がある。
変形にも繋がるので避けた方が良い。
乾燥工程①(数日)
タオルや新聞紙を入れて数日陰干し。
丸洗い直後はブーツ内から色が出るので、お古のタオルが良い。
半日ほどで別のタオルに交換。
水気が落ち着いた翌日からは、替えタオルか新聞紙に変更。
新聞のインク移りが多少あるので、気になる場合は
キッチンペーパーか替えのタオルにする。
乾燥時に温風や直射日光を当てると劣化に繋がるので
風通しの良い室内や日陰のベランダなどが良い。
乾燥工程②(一週間~)
表面が半渇きの状態で一度目のオイルアップ。
水分が抜けて乾燥する時がダメージになると言われ
表面が収縮してしまい、劣化の原因になってしまう。
潤いの無い革はパリッとしてると思うが、その状態は極端に強度が低い。
それを防ぐ為、このタイミングでオイル入れが推奨とされている。
画像はレクソルコンディショナーを塗っているが
普段使いのオイルやデリケートクリームなどでも良い。
スエードのオイル入れは、一般的には推奨されていないが
レクソルコンディショナーであれば、変色などの悪いは影響はほぼない。
ブーツ内に詰めている物を取り除き
インソールもひび割れ防止の為、デリケートクリームなど
浸透性が高く、さらっとした物を塗るのがおススメ。
ミンクオイルなど普段使っている物でもOK。
ブーツを傾け通気を良くし、完全に乾くまで放置。
どぶ漬けした場合は、インソール下のコルク層まで沁み込んでいるので
乾燥期間は季節にもよるが、中の詰め物を取り除いてから
最低でも一週間、全部で10日ぐらいは設けた方が良い。
仕上げ
ここまでの行程が終わるのに約二週間、やっと終わると安心する。
それぞれのレザーに合った方法で仕上げる。
スエードは毛が寝てしまうので、スエード用ブラシでしっかりと起こす。
防水スプレーを掛けるなら、正にこのタイミングがベスト。
栄養を補えるスプレーで仕上げるのも良い。
注意事項
丸洗いは一度始めると、やり直しが出来ないことが多い。
自分は何度も実践して、思ったほど綺麗にならなかったり
達成感が感じられない時も、正直に言えばある。
ただ、古いオイルを抜いて革のリフレッシュ、カビや臭いの除去など
見た目以外の部分での成果もあるので
やって損したとか、失敗したと思ったことは一度もない。
基本的に、毎シーズン行う作業ではないので
革に優しいアイテムを使い、全ての作業に時間を掛けたい。
レッドウィングのブーツは大切に扱えば
何十年と履ける物なので、じっくりと丁寧に仕上げたい。
もし丸洗いをする場合は、良く調べた上で行い
そして、くれぐれも自己責任でお願いします。
今は修理専門店やクリーニング店などで、依頼出来るところも多いので
ソール交換と一緒に丸洗いをしてもらうのも良いと思う。